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偏愛エレジー(11)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 二人が店を出て行くと、店内は元の静かなざわめきを取り戻した。

「――今のヤツ」
「え?」

 尚大が空いたグラスに手酌でビールを注ぎながら、ぽつりと呟くように言葉を零した。尚大の声に導かれるように、位織は尚大の表情を見た。

「今の。ピアノ弾いてた」
「――うん?」
「アイツのこと好きなの俺」

 グラスに満たされた液体を呷って、尚大がいつもの笑みを浮かべた。

「……、……そっか」

 位織はピアノを見た。そこにはもう彼の姿はない。けれども彼が残した余韻は今も店内を柔らかい音で包み込んでいるような、そんな気さえする。その場にいた誰もが彼に惹きつけられていた。尚大が彼に恋するのも、悔しいが納得できた。

 ――それじゃあ俺は、……。

 失恋した。こんなにもあっさりと。

 位織が感じ取った尚大の告白欲を、こんな形で聞くことになるとは思ってもみなかった。尚大の笑みに見え隠れした、少しの切なさの所在。

 『重くなった』

 位織が使ったその言葉はきっと――。

「ねぇ位織さん」

 そのまま黙ってしまった位織をどう受け取ったのか、尚大が作ったような明るい声で位織の名を呼んだ。

「良かったらうちで、飲み直さねぇ?」

 想い人が、おそらく恋人であろう男と店を出て行くところを目の当たりにしたはずの尚大の表情は、いつもと何も変わるところがない。尚大にとって、もう馴染んでしまった感情なのだろうか。

 ――その言葉はきっと、……。

 吉と出た。

「……ん」

 いいよ、と小さく頷いて、位織は寂しく笑った。






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尚大×位織

関連:和大×ナツメ 




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コメント
ううっ、切ない。
こんな風に始まってしまった二人だったのですね…。
しかもナツメさん、こっから和大に会うまでが長いし!
その間ずっとこの二人は振り回されちゃうわけじゃないですか??
うーん。
続きがどうなるのか気になります!
2009/04/06(月) 11:57 | URL | 蛍 #-[ 編集]
ついつい気になって…
ナツメと和大の話を読み返しちゃいました。
その時の尚大は最初の方で後半こそ助けてくれましたが序盤では和大を牽制したりとイヤな奴なのかと思わされましたが…位織の7年より長く片思いしてるんじゃあ、そりゃあ牽制もしますよねと納得です。そしてナツメが拉致られたときに和大以上に気が気でないであろうこともやっと繋がりました。
始まりはとても切なくやるせない故に2人がこれからどんなふうに時を重ねていくのか目が離せないです~~(T_T)
2009/04/06(月) 18:14 | URL | chihiron #-[ 編集]
こんな感じで7年(;´Д`)
>蛍さん(*´∀`)

あいー位織、いっちゃん最初っから
甘えんぼ尚のすけ(誰)の慰め役ですたw
んでナツメが恋人と別れる度
ナツメを慰めるツモリでヤって
そしてナツメがまた新しい相手と付き合うたび
傷ついて位織んに慰めてもらう
延々ループでw
つ……続きアワワワワ
ほんとにちゃんとくっつくか未だに心配ですが(私が)
なんとか最後まで書ききりたいと!アセアセ
どうぞ最後までお付き合いよろすくですーっ!

**********************************************

>chihironさん(*´∀`)

のわわわわわっ読み返しとか!ほんとすいません
ありがとうございますお疲れサマですお茶をドゾ(;´Д`)つ且~
ナツメを自分のものにしようとすると
ナツメとのイイ関係が保てなくなると分かってて
自分のものにはできないと思いつつ
ナツメが次々と色んな人のモノになるもんで
そしてその度ナツメが傷ついてるもんで
複雑な思いで見守ってた、そんなつもりで書いてました
あいやでもナツメの話を書いてた頃は
尚のすけ(だから誰)の具体的な話は浮かんでなかったので
すいませんほんとに後付けでアワワワアセアセ
でも整合取れてたみたいでほんとほっとしますた
あ(・∀・)り(・∀・)が(・∀・)と(・∀・)う!ございマス!(´Д⊂ヽ

こんなユルユルな書いてる人ですが
どぞこれからもユルユルに温かく見守ってやってくだちぃ
おながいします!(切に!)
2009/04/07(火) 00:26 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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