尚大の部屋は三階の、見晴らしの良い角部屋だった。中は学生マンションらしく単身者向けのさして広くはない一部屋に、必要最小限の家具と家電が置かれていた。
殺風景にも見える部屋の片隅にはバイク雑誌が積み上げられている。定食屋で少し聞いた、アルバイト代の多くがバイクに消えて行くと話していた尚大の言葉を思い出しながら一番上の一冊を取り、ベッドに背を預けて座った位織は読むでもなくぱらぱらとそれをめくった。
殺風景にも見える部屋の片隅にはバイク雑誌が積み上げられている。定食屋で少し聞いた、アルバイト代の多くがバイクに消えて行くと話していた尚大の言葉を思い出しながら一番上の一冊を取り、ベッドに背を預けて座った位織は読むでもなくぱらぱらとそれをめくった。
「ビールで良いすか」
「……ん」
小さく頷いて、雑誌越しに尚大の背を眺める。煙草を咥えながら冷蔵庫を覗き込む姿に身体がどうしようもなく騒ぐ。この感情は紛れもない――欲情。
見る者が見たら位織は飢えた獣のような瞳をしているかに見えただろう。位織は尚大を見据えたまま、こくりと喉を鳴らして空唾を飲み込んだ。
「はい」
ビールの缶を二本携えて戻った尚大が、一本を位織にどうぞ、と差し出す。位織はその缶を受け取ることなく、缶を持つ尚大の指先をじっと見た。
「やっぱり、ビールは……いいから」
「え?」
位織は持っていた雑誌をすっと脇に置いた。尚大の指先から腕、首筋へと舐めるように視線を移し、目を合わせる。
「――それより、……しねぇ?」
――そのつもりで部屋に呼んだ、だろ?
尚大が欲しいと、縋るような気持ちで言葉を吐いた。けれどもそれを悟られないように。位織は尚大に、薄く笑ってみせた。
尚大が咥えていた煙草を唇から外した。机に置かれた灰皿でそれをにじり消し、位織に視線を戻す。
「……位織さんが、いいなら」
「ん、……いい」
しよ、と囁いて、位織は尚大の手から缶をそっと取り、それを床に置いた。
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尚大×位織
関連:和大×ナツメ
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「……ん」
小さく頷いて、雑誌越しに尚大の背を眺める。煙草を咥えながら冷蔵庫を覗き込む姿に身体がどうしようもなく騒ぐ。この感情は紛れもない――欲情。
見る者が見たら位織は飢えた獣のような瞳をしているかに見えただろう。位織は尚大を見据えたまま、こくりと喉を鳴らして空唾を飲み込んだ。
「はい」
ビールの缶を二本携えて戻った尚大が、一本を位織にどうぞ、と差し出す。位織はその缶を受け取ることなく、缶を持つ尚大の指先をじっと見た。
「やっぱり、ビールは……いいから」
「え?」
位織は持っていた雑誌をすっと脇に置いた。尚大の指先から腕、首筋へと舐めるように視線を移し、目を合わせる。
「――それより、……しねぇ?」
――そのつもりで部屋に呼んだ、だろ?
尚大が欲しいと、縋るような気持ちで言葉を吐いた。けれどもそれを悟られないように。位織は尚大に、薄く笑ってみせた。
尚大が咥えていた煙草を唇から外した。机に置かれた灰皿でそれをにじり消し、位織に視線を戻す。
「……位織さんが、いいなら」
「ん、……いい」
しよ、と囁いて、位織は尚大の手から缶をそっと取り、それを床に置いた。
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