位織は尚大に手を伸ばした。
「尚大……」
気付いたら、彼を抱き締めていた。尚大の本当の気持ちは分からない。けれども尚大が浮かべるこの表情には、抱擁が必要だと感じた。
「位織さん? ……」
尚大は驚いたように一度目を見開いたが、位織が黙って抱き締める腕の力を強めると、吐いた呼吸とともに尚大の身体から力が抜けた。
「尚大……」
気付いたら、彼を抱き締めていた。尚大の本当の気持ちは分からない。けれども尚大が浮かべるこの表情には、抱擁が必要だと感じた。
「位織さん? ……」
尚大は驚いたように一度目を見開いたが、位織が黙って抱き締める腕の力を強めると、吐いた呼吸とともに尚大の身体から力が抜けた。
そうして少しの間、尚大は位織の腕にその身を預けていた。
「……気持ちいいね、こういうの」
「ん……」
「とか言うのは、あんま良くねぇのかな」
ありがと位織さん、と少しの照れを緩く笑うことで隠したような表情で、尚大がそっと身体を離した。位織も柔らかく笑んで、抱き締める腕を解いた。
「泊まってく? 俺明日朝一バイトあるけど」
「ん……じゃあそうさせてもらう……」
位織は小さく頷いた。
――こんな関係でもいい。
遂げることを躊躇する恋に小さく傷付いた尚大が、悩み疲れた時、ふと位織の事を思い出すような、そんな存在でも構わない。彼の想いが叶うまでは、せめて自分がその存在であり続けることが許されるように。
身体を起こして煙草を吸う尚大の背をじっと見詰め、位織はそっと祈った。
「武内君」
「――はい」
ゼミの授業が終わり、研究室を出ようとした位織を友永が呼び止めた。
今日、尚大のレポートの発表が無事終わった。位織のアドバイス通り友永の著作と数冊の関連書籍を読んだらしい彼の発表内容は、初回にしてはなかなかの出来栄えだと、友永からもそれなりの評価を得た。
その場にいた位織もほっと安堵した、その矢先のことだった。
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尚大×位織
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「泊まってく? 俺明日朝一バイトあるけど」
「ん……じゃあそうさせてもらう……」
位織は小さく頷いた。
――こんな関係でもいい。
遂げることを躊躇する恋に小さく傷付いた尚大が、悩み疲れた時、ふと位織の事を思い出すような、そんな存在でも構わない。彼の想いが叶うまでは、せめて自分がその存在であり続けることが許されるように。
身体を起こして煙草を吸う尚大の背をじっと見詰め、位織はそっと祈った。
「武内君」
「――はい」
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