鷹揚で明るい梁瀬の論理はいつも大胆で位織にとって興味深く、自ら展開した論を確かめるためなら徹夜も辞さない梁瀬の研究に対する姿勢は、彼の芯の強さを思わせた。
「ここんとこ毎晩じゃね? 行き詰まってんの?」
「そういう訳じゃねぇよ」
緩く笑って、梁瀬を見た。
「ここんとこ毎晩じゃね? 行き詰まってんの?」
「そういう訳じゃねぇよ」
緩く笑って、梁瀬を見た。
友永と切れてから、四年の月日が流れていた。
何も変わらない日々。ただ一途に尚大からの連絡を待ち、ただ一途に。――彼の不幸を願う。
彼の想い人に新しい恋人ができるたび、その彼に想いを伝えられないまま彼を抱くたび、小さな傷を抱えて尚大は位織の元へ帰ってきた。
それで良かった。
そもそも同性同士である以上、不毛な関係しか築けない。お前だけのものだ、と言い合ったところでそのあとの確証は何も得られない。ならば尚大が負った傷を癒したいと、誰かの腕を求めた時、必ず立ち寄る場所として自分の地位を築くことの方が、位織にとって確かなことに思えた。
「久々飲みにでも行かね? 何も予定なければ、来週木曜日」
「木曜?」
「竹内、誕生日だろ? 奢るよ」
「なんで俺の誕生日……」
「それ」
梁瀬が位織の首に掛けられた社員証を指差した。そこには顔写真の他に名前と所属、生年月日が記されている。
「そっか、俺、来週誕生日か……」
「俺よりちょっと先に三十路だな。盛大に祝ってやるよ」
「ん……」
位織が小さく頷くと、梁瀬はどこかほっとしたように表情を緩めた。
「そん時に……」
「え?」
「いや、なんでも。じゃあな、あんま無理すんなよ」
位織の肩をぽん、と一度優しく叩き、梁瀬は研究室を出て行った。
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尚大×位織
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何も変わらない日々。ただ一途に尚大からの連絡を待ち、ただ一途に。――彼の不幸を願う。
彼の想い人に新しい恋人ができるたび、その彼に想いを伝えられないまま彼を抱くたび、小さな傷を抱えて尚大は位織の元へ帰ってきた。
それで良かった。
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「木曜?」
「竹内、誕生日だろ? 奢るよ」
「なんで俺の誕生日……」
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「そっか、俺、来週誕生日か……」
「俺よりちょっと先に三十路だな。盛大に祝ってやるよ」
「ん……」
位織が小さく頷くと、梁瀬はどこかほっとしたように表情を緩めた。
「そん時に……」
「え?」
「いや、なんでも。じゃあな、あんま無理すんなよ」
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