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偏愛エレジー(42)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「そろそろ俺も独りよがりのお守り役は、終わりかもな……。結局俺は、あそこまでバカにはなりきれねぇし」

 どこか一点を見つめ、尚大が一人話し続ける。その視線の先にいつもあるもの。そこに今、もう一人の人物が寄り添うようになった。

「ナツメが誰とヤっても、何回浮気しても、それでもナツメん事責めねんだよ。それどころか俺といたなら安心だとか……なんつかマジでスゲェバカなんだよ。ナツメもそれに結局ほだされてやがんの」

 誰とヤっても。

 何回浮気しても。

 ――浮気。

 それでもその言葉を使えるということは、その新しい相手は想う相手に自分の想いを伝えたのだろう。

 だから心を重ねることができる。

 尚大も、位織も、それができないまま、ただ年月を重ねてきた。

 想いを伝えなかった自分たちは、想う相手が別の相手と身体を繋いでも、それを浮気とは呼べない。それを責めることもできない。


 身体ばかりが尚大の記憶を重ねてゆく。

 心は。

「尚大、……」

 ――来週俺の誕生日だって、知ってる?

 特にその日に強い思い入れがあるわけじゃない。実際位織自身それを忘れていた程に。けれども、それさえ知らずに二人はただ身体だけを重ねてきたことを、ふと寂しい、と思った。

「ん……?」

 名を呼ばれて、尚大が位織に視線を向ける。位織はその視線に、笑みを返した。

「もう一回、やんねぇ?」
「いいの?」
「ん、やろ。ヤりたい……」

 尚大の手から煙草を取り、脇の灰皿に置いた。そっと尚大の上に身体を重ねると、尚大が位織の背に腕を回した。

「ん、……」

 重なる唇。

 はらり。

 いつか見た桜が、静かに散っているのが見えた。






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尚大×位織

関連:和大×ナツメ 




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2009/05/10(日) 10:46 | | #[ 編集]
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