「そろそろ俺も独りよがりのお守り役は、終わりかもな……。結局俺は、あそこまでバカにはなりきれねぇし」
どこか一点を見つめ、尚大が一人話し続ける。その視線の先にいつもあるもの。そこに今、もう一人の人物が寄り添うようになった。
「ナツメが誰とヤっても、何回浮気しても、それでもナツメん事責めねんだよ。それどころか俺といたなら安心だとか……なんつかマジでスゲェバカなんだよ。ナツメもそれに結局ほだされてやがんの」
どこか一点を見つめ、尚大が一人話し続ける。その視線の先にいつもあるもの。そこに今、もう一人の人物が寄り添うようになった。
「ナツメが誰とヤっても、何回浮気しても、それでもナツメん事責めねんだよ。それどころか俺といたなら安心だとか……なんつかマジでスゲェバカなんだよ。ナツメもそれに結局ほだされてやがんの」
誰とヤっても。
何回浮気しても。
――浮気。
それでもその言葉を使えるということは、その新しい相手は想う相手に自分の想いを伝えたのだろう。
だから心を重ねることができる。
尚大も、位織も、それができないまま、ただ年月を重ねてきた。
想いを伝えなかった自分たちは、想う相手が別の相手と身体を繋いでも、それを浮気とは呼べない。それを責めることもできない。
身体ばかりが尚大の記憶を重ねてゆく。
心は。
「尚大、……」
――来週俺の誕生日だって、知ってる?
特にその日に強い思い入れがあるわけじゃない。実際位織自身それを忘れていた程に。けれども、それさえ知らずに二人はただ身体だけを重ねてきたことを、ふと寂しい、と思った。
「ん……?」
名を呼ばれて、尚大が位織に視線を向ける。位織はその視線に、笑みを返した。
「もう一回、やんねぇ?」
「いいの?」
「ん、やろ。ヤりたい……」
尚大の手から煙草を取り、脇の灰皿に置いた。そっと尚大の上に身体を重ねると、尚大が位織の背に腕を回した。
「ん、……」
重なる唇。
はらり。
いつか見た桜が、静かに散っているのが見えた。
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尚大×位織
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何回浮気しても。
――浮気。
それでもその言葉を使えるということは、その新しい相手は想う相手に自分の想いを伝えたのだろう。
だから心を重ねることができる。
尚大も、位織も、それができないまま、ただ年月を重ねてきた。
想いを伝えなかった自分たちは、想う相手が別の相手と身体を繋いでも、それを浮気とは呼べない。それを責めることもできない。
身体ばかりが尚大の記憶を重ねてゆく。
心は。
「尚大、……」
――来週俺の誕生日だって、知ってる?
特にその日に強い思い入れがあるわけじゃない。実際位織自身それを忘れていた程に。けれども、それさえ知らずに二人はただ身体だけを重ねてきたことを、ふと寂しい、と思った。
「ん……?」
名を呼ばれて、尚大が位織に視線を向ける。位織はその視線に、笑みを返した。
「もう一回、やんねぇ?」
「いいの?」
「ん、やろ。ヤりたい……」
尚大の手から煙草を取り、脇の灰皿に置いた。そっと尚大の上に身体を重ねると、尚大が位織の背に腕を回した。
「ん、……」
重なる唇。
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