「それだけですか」
「――はい」
友永がゆっくりと、絶望したような溜め息を吐いた。押し寄せる絶望の波と葛藤するようにしばらくじっと目を閉じ、そして眉を寄せて目を開けた。
「……君は、分かっていなかったのか」
「何を、ですか」
「位織がどれほど君に、尽くしたのか」
「――え」
「君は私の元で、何を学んだのですか。私は常に、何事においても些細な変化も見過ごさない、鋭い観察眼を養うように言って来たはずです」
「……、はい」
「そんな君に、位織の心を奪われたのかと思うと……、……君に今の私の気持ちが分かりますか」
友永は悔しさに震えているようだった。尚大は友永の言葉の意味を推し量るように、じっと友永の姿を見た。
「位織が何も言っていないようだから、私から言いましょう」
感情を押し殺すように。友永は顔を上げた。
「君は確かに、優秀な学生だった。しかし君が卒業できたのは、位織のおかげなのですよ」
「……どう言うことですか」
「私は、君を想って私と別れたいと言った位織に、君の卒業を引き合いに私との関係を続けることを強要したのですよ」
「お疲れ。また居残んのかよ」
「ん……あと少し、だけ」
時刻は午後七時を少し回ったところだった。じっと机上のモニターを眺めたまま帰る気配のない位織に、帰り支度を整えた梁瀬が声をかけた。
「もしかして、ずっと同じとこで悩んでんの?」
梁瀬がずい、と身体を折って位織の眼前に映るモニターを覗き込む。そこには梁瀬の予想通り、三週間前と同じ画面が展開されていた。
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尚大×位織
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「君は確かに、優秀な学生だった。しかし君が卒業できたのは、位織のおかげなのですよ」
「……どう言うことですか」
「私は、君を想って私と別れたいと言った位織に、君の卒業を引き合いに私との関係を続けることを強要したのですよ」
「お疲れ。また居残んのかよ」
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梁瀬がずい、と身体を折って位織の眼前に映るモニターを覗き込む。そこには梁瀬の予想通り、三週間前と同じ画面が展開されていた。
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