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偏愛エレジー(52)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 研究所の建物を出ると、僅かな外灯のみに照らされた薄暗い前庭が眼前に広がる。ロータリー状に舗装された車道の横に平行する歩道を歩き、正門の側まで行くとそこに小箱のような建物があり、その中では二十四時間体制で守衛が待機する。機密を扱うからか、敷地への侵入者に対してのチェックは厳しい。

 位織はそこに座る守衛にお疲れ様です、と声を掛けてから、閉じた門の横に取り付けられた通用口を抜けて外に出た。

 いつも閑散としている敷地前の道路。駅に向かう方向のその先に、見覚えのある車が停まっていた。

 深いグレーのクーペ。

 一歩ずつ踏み締めるように歩いていた足を取られたかのように動けなくなる。位織はその場に立ちすくんだ。それと同時に車のドアが開いた。

「位織さんっ」

 車から下りてきた男が、位織に向かって駆け寄ってくる。

「尚大……」

 三週間ぶりの姿。

 その声に、位織の鼓膜は切なく震え、全身に尚大の声を響かせる。

 こみ上げる熱に視界は微かに歪み、視覚もまた彼の姿を、位織の全神経の隅々にまで運んでゆく。

「良かった……仕事は変えてなかったんだ」

 ただ立ちすくむだけの位織の前に、尚大がまっすぐ向かい合って立った。走った距離は僅かなはずなのに、尚大の肩が呼吸のたびに上下する。昂ぶったその様子に、嫌な予感が走る。

「今日、友永教授のとこに行ってきた。聞いたよ位織さん。位織さん……俺のことで脅されてたんだってね」
「……、尚大」

 ――知られた。

 まさか、尚大が友永のところへ向かうとは思ってもみなかった。あるいは友永も、尚大にあの頃のことを話すとは思いもよらなかった。

 血の気が引いてゆく。呼吸が浅くなる。闇に呑まれそうな視界。尚大が見えなくなりそうで、位織は俯いた。




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尚大×位織

関連:和大×ナツメ 




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尚大はやっぱスポーツカーってイメージでしょかw
RX-8のつもりすw



コメント
とうとう
 ご対面ですね!!
 位織さん、今度は素直になれるんでしょうか。
 また気持ちを閉じ込めちゃったりしたら、切ないなぁ…。
2009/05/20(水) 08:26 | URL | 如月久美子 #-[ 編集]
いよいよでももうひとふん張り(;´Д`)
>如月さん(*´∀`)

あいーとうとう会いますた!
位織は長年閉じ込めてきた想いを開放させることができないす
どうすればイイですか如月さんーッ!!!アッ――!
尚大は一旦位織が分からないまま引く予定です
どんだけダラダラ続けるんすかこの連載
いや一回の更新量が少ないからか
ダラダラちまちますいませんーっ
引き続きのお付き合いぜひによろすくおながいしますっ(;´Д`)
2009/05/20(水) 23:42 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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