偏愛エレジー（69）

「これからもずっと、尚大のためだけにいられる」
「位織さん……」
「尚大。尚大は俺が、必要……？」

　――どうか。うん、と言って……尚大。

　もう、俺なしではいられないと。

「位織さん、俺」
「……ん」
「この三週間で思い知ったよ。どれだけ位織さんが、俺にとって大事な存在なのか」
「ん……」

　尚大の声が胸に響く。呼吸ができなくなりそうな程に心が震える。胸から順に、身体が熱く満たされてゆく。その熱が、目元にまで込み上げてくるのを感じた。

　――泣いてしまう。

　溢れてしまわないように。瞬きせずに尚大をじっと見た。

「俺……位織さんがスゲェ必要だよ。位織さん、俺のためにいて。……いて欲しい」
「ん……、……」

　小さく頷くと、堪えていた涙が零れた。満杯にまで水を張った器を、静かに傾けたように。一度傾けた器はそのまま止まることを忘れたように、次々に涙を溢れさせた。瞬きのたびに、また一筋。流れて頬を伝う。

　その頬を手のひらでそっと拭って、尚大が位織を抱き締めた。位織を包み込むように、強く。

「ごめん位織さん……きっと今までそうやって、俺のいないところで泣いてきたんだよね。今までずっと、俺のためだけにこの身体……開いてきてくれてたのに」

　もう、止まらない。満たされて、溢れ出す心。涙と共に、尚大にこぼれ落ちてゆく。





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尚大×位織

関連：和大×ナツメ　



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……恥ずかしすぐる(；´Д｀)