偏愛エレジー（70）

　尚大の肩越し、顔を見られなくて良かったと思いながら、泣きたいだけ泣いた。もう堪えなくても良いんだと思うと、涙はいつまでも溢れては零れた。

　尚大はずっと、位織の背を撫でていた。七年分の、位織からもらった優しさを、今から少しでも返そうとしているかのようだった。

　ようやく涙が止まると、位織は最後に一度、小さくしゃくり上げるように息を吸い込み、そして長い吐息を零した。やっと位織の涙が落ち着いたのを察して、尚大が位織の髪を撫でた。

「位織さんごめん……俺頭に血が上って……酷くした？　痛かった、よね」

　位織を労るようにそっと、尚大の手が位織の背を撫で、そのまま腰からその下へと下りてくる。位織は緩く首を横に振った。

「尚大が、俺を求める余りそうなったっていうなら。今までで一番……」

　悦かった……、と囁いて、尚大の耳朶に口付けた。尚大は少し、こそばゆそうに肩を竦め、そっか、と笑った。そして、ごめんね、ともう一度囁いて、位織を抱き締め直した。

「尚大、……」
「ん……？」
「もう一回、して」
「……いいの？」
「ん……」

　やっと心が繋がった今、もう一度、尚大に心も身体も求められたかった。

　尚大の欲望全てが自分に向けられていると実感したかった。






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尚大×位織

関連：和大×ナツメ　



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気付けばもう70話。
ダラダラ続くこの話にお付き合いいただきありがとうございます(´Д⊂ヽ
もう１ラウンド、楽しんで書きたいと思います(*´∀｀)