恋の理由・ある夜の会話（１）

　今日水曜は、二人ともそれぞれのゼミが四限にあったあと、翌日は一限から授業がある。

　野田は自ら稼いだアルバイト代を学費に充て、そしてまた、恋人と一緒に暮らしているとも聞いている。朝九時に始まる一限が翌日にあるとその前夜はゆっくりと過ごせるわけではないが、長く夜を過ごせる日や休みの前日はアルバイトに充てるかあるいは恋人と一緒に過ごしたいだろう。

　一番手頃な夜の長さのこの日、アルバイトが入っていないらしい野田に野本は学生マンションに一人暮らしをする野本の部屋で飲まないかと誘った。野田は少し考えたあと、「晴れてたら行くよ」と奇妙な返事をした。

　春、突然の大雨が降った時、電車が止まり帰る手段がなくなってしまったのを理由に、部屋に泊まって行くよう誘った野本に野田は、何の迷いもなく「帰るよ」と答え、そして大雨の中本当に帰って行った。だからもし今日雨が降っていたなら、本当に野田はここには来ていなかっただろう。

　野田はいつも迷いのない目をしている。――どう表現すれば良いのか、物理的にも、精神的にも。表面的にも、内面的にも、と言う方が良いだろうか。

　入学式で名簿順の都合で偶然野田の隣りに座り、人懐こい笑みとともに自己紹介した野本に、野田は笑顔を全く見せることなく、形ばかりの自己紹介を返した。まるで「何があっても笑わない」と決めているかのように。

　だから返って野田は、野本の興味を引いた。

　どうして笑わないのか。

　友人さえ作るつもりもない様子の彼は、一体大学生活をどのように送ろうとしているのだろうか。

　まさか、極度の人見知り？

　いろんな疑問と憶測が野本の中で交錯した。

　今思えばもうその時すでに、野田に心奪われていたのかも知れない。



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野田歩について：歩×慎治　
野本が歩に告った話　　　　→　『瞳を閉じればあなたが、まぶたのうらにいることで』
歩が雨の中帰ってった話　→　『雨の日には抱きしめて、その腕で確かめて。』


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次までの繋ぎに珍しくエロじゃない話をｗ
歩と野本の飲み会、歩の自分語りを野本目線で
しばらくまたーり書いてみたいと思います。
よろしければ最後までお付き合いいただければウレシスです(*´∀｀)