恋の理由・ある夜の会話（２）

　自分を責めているのか、あるいは何かを堪えているのか。かなりハードだとも思えるアルバイトのスケジュールも、まるで自分への罰とでも思っているかのように。坦々とそれをこなしているように見えた。

　野田を見守り続けて一年と少し経った頃。ふと、彼の表情の変化に気付いた。目は、相変わらず迷いがない。周囲を無駄に見回すことは一切せずにまっすぐに、目標を見据えている。ただ、彼が纏う空気の色が変わった。

　夏休み開け九月、久し振りの再会に浮き足だった周囲。野本も明るく野田に再会の挨拶をした。その時初めて、野田が笑顔を返した。

　今も鮮明に覚えている。

　その笑みに、野本の心は鷲掴みにされた。

　それが野田への最初の恋の自覚。

　それから何度か見た、野田の笑顔。そのたびに野本の心はますます野田に囚われていった。

　本当のところ、野田にフラれた今もその想いは変わらない。

　ただ、野田の意思の強い目を見ていると、野田が一緒にいたいのは自分じゃないということが、痛感できた。

　それなのにどうしてこんなにも彼に惹き付けられるのか。

　今夜はその理由を、野田本人から聞き出してみたかった。






　夕食は学食で済ませてきた。帰りにコンビニで買い込んできた乾きものをテーブルに広げ、二人は静かに飲み始めた。

「あー……、テレビでも点ける？」
「え？　うん」

　無言の雰囲気がいたたまれなくて、思わずテレビのスイッチを入れた。

　たまたま点けたチャンネルで流れていた野球中継を二人で見ながら、野田の様子を伺い見る。

　――読めねぇ。

　ぼんやりテレビを眺めているのか、その内容は野田の頭にまで届いているのか。ただ、時折ビールを口元に運んでそれを飲む、野田の無表情に返って可笑しさがこみ上げた。



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野田歩について：歩×慎治　
野本が歩に告った話　　　　→　『瞳を閉じればあなたが、まぶたのうらにいることで』
歩が雨の中帰ってった話　→　『雨の日には抱きしめて、その腕で確かめて。』



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歩の特技：会話のない空気が気にならないことｗ