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Sometime Butterfly(3)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「このまま置いてたら、また農薬撒くよな」
「うん……」

 定期的に、農薬が散布されることは二人も知っていた。散布直後の畑の周囲は独特の臭気が澱み、風に吹かれてその澱みが少しずつ霧散する。これが虫たちを死へと追いやる匂いなのかと思うと、胸一杯吸い込むと自分たちもいつか虫たちと同じ道を歩かされてしまいそうな気がして、子供心にもその澱んだ空気で肺を満たすことが憚られた。

 見つけた小さな命。寄り添う二匹はどこか自分たちのようにも思えた。二匹をこのままここに放置の挙句、農薬に晒される運命を辿らせたくはないと思った。

「――うちで蝶に孵せるかな」

 同じことを彼も思っていたらしく、少し不安そうに七月を見た。

「大丈夫。母さんからキャベツもらって、ちゃんと洗って。それ食べたらきっと、元気に大きくなるよ」
「……うん、そだね」

 七月に後押しの言葉をもらい、彼は安堵したように笑った。そして七月はその笑みに、安堵する。

 彼の笑顔。

 それが七月の全てだった。

 一枚、二匹の乗った葉をそっと失敬して家に帰り、母に頼んで新しいキャベツの葉をもらった。それを二匹と一緒に虫かごに入れて、数週間。時折葉を交換しながら二匹の成長を見守った。

 二匹はみるみる大きくなり、やがて、動かなくなった。蛹(さなぎ)になった二匹を、それでも二人は毎日見守り、ある朝、ようやく二匹が蝶になっているのを見つけると、二人は嬉しさに顔を輝かせた。

 狭い虫かごの中で、ひらひらと白い羽を羽ばたかせる二頭。けれども二人でじっと眺めているうち、少し、胸が痛んだ。

「――放してやる?」
「……そだね」

 言い出したのは七月からだったと思う。狭い世界に二人きり。広い世界を見せてやらなければ、と。





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昆虫観察日記すいません(;´Д`)
ちなみに蝶は正式には「一頭、二頭」と数えるそうです。



コメント
秘密拍手コメレスでし(*´∀`)あ(・∀・)り(・∀・)が(・∀・)と(・∀・)う!ございます!
>秘密拍手コメiさん(*´∀`)

今回七月の名前もちゃんと姓名紹介みたいな形ではまだ
出せていない状況で、この話でハジメテ七月を知ってくださった方には
何?という流れになってるんじゃないでしょかとか
思いつつどこでどうすればイイのか
まだまだテクニックが身に付かず
オノレの未熟さにイテテテでございます(;´Д`)
一応七月と関連するというかまぁぶっちゃけ同じ「七」の字を使ってみますた\(^o^)/

わ、人にドラマありすね、詳しくは分かりませんが
もうただそのお話だけで切ないです(´Д⊂ヽ
色んな人の中にあるそんなドラマの
裏にある心の機微を汲み取って文にできるような
書き手になってイきたアッ――!いと、思いますです(;´Д`)
まだまだ未熟ですがorz これからもお付き合いの程よろすくおながいします!


2009/07/05(日) 23:24 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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