あの時、七月に言い寄っていた横井に応えたのも、そもそもは七斗が七月の元から去ってゆくのを目の当たりにしたからだ。あの時はあれでも横井に救われたと、今となっては思っている。
「話はそれだけ? なら俺……ちょっと出かけてくる。部屋は好きに使ってくれたらいいよ」
男と寝ることを止めたところで、七斗が七月の元に戻ってくることもない。年齢を重ねると共に大きくなってゆく欲望。こうやって七斗と時折顔を合わせて話をするだけでは、満たされないと感じる程に。
「話はそれだけ? なら俺……ちょっと出かけてくる。部屋は好きに使ってくれたらいいよ」
男と寝ることを止めたところで、七斗が七月の元に戻ってくることもない。年齢を重ねると共に大きくなってゆく欲望。こうやって七斗と時折顔を合わせて話をするだけでは、満たされないと感じる程に。
――なら、その欲望の捌け口はどこか別の場所に求めるしかないだろ?
それを、『心配』という言葉を振りかざして七斗にとやかく言われたくはない。
缶の中にビールを残したまま、七月は立ち上がった。
「七月っ」
僅かに慌てたように、七斗もソファから立ち上がった。七斗はそのまま大きな歩幅で七月に近づき、七月の手首を取った。
「また出掛けんのかよ」
「……職場に行くだけだよ」
取られた手首が熱い。
七月を圧倒するようなその熱に、身体が震えそうになる。
息が、乱れてしまいそうになる。
それを規則的な呼吸を意識することで抑え、ごく穏やかな口調で返した。けれどもそれ以上の口出しはするなと言うように、強い目で七斗を見る。
「こんな時間からかよ。もう真夜中過ぎてんのに?」
「締め切りのある仕事だから。昼夜は関係ないんだよ」
「またオトコだろ?」
「……、……どう思ってくれてもいいよ」
実際、七斗にそう思われても当然とも言える生活を送っている。
ただ、七月は割り切れる相手としか関係を持つことはなく、決して相手を深く追うこともしない。けれども相手の部屋に居候し、おそらくこじれた挙げ句見限られ部屋を追い出されてしまうことを常とする七斗に、それを理解するのは難しいのかも知れない。
少し投げやりに答えて、取られた手首を振り解こうとしたが、七月のその答えが返って七斗を煽ったのか、七斗がより強い力で、掴んでいた七月の手首を握った。
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それを、『心配』という言葉を振りかざして七斗にとやかく言われたくはない。
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「また出掛けんのかよ」
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七月を圧倒するようなその熱に、身体が震えそうになる。
息が、乱れてしまいそうになる。
それを規則的な呼吸を意識することで抑え、ごく穏やかな口調で返した。けれどもそれ以上の口出しはするなと言うように、強い目で七斗を見る。
「こんな時間からかよ。もう真夜中過ぎてんのに?」
「締め切りのある仕事だから。昼夜は関係ないんだよ」
「またオトコだろ?」
「……、……どう思ってくれてもいいよ」
実際、七斗にそう思われても当然とも言える生活を送っている。
ただ、七月は割り切れる相手としか関係を持つことはなく、決して相手を深く追うこともしない。けれども相手の部屋に居候し、おそらくこじれた挙げ句見限られ部屋を追い出されてしまうことを常とする七斗に、それを理解するのは難しいのかも知れない。
少し投げやりに答えて、取られた手首を振り解こうとしたが、七月のその答えが返って七斗を煽ったのか、七斗がより強い力で、掴んでいた七月の手首を握った。
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