Sometime Butterfly（20）（R18）

「っ……」

　こんな仕打ちは、今まで誰からも受けたことがない。

　むしろ割り切った関係と分かっているからこそ、互いを尊重し、その場限りの行為を愉しむべく大切にし合う。また、それができる相手を選んできた。

　それが今は、どうだ。

　同じ日に生まれ、一緒に育ってきた弟に、嘲笑され唾を吐きかけられて、そして――。

「っ、あっ」

　背後を一気に貫かれた。

　穿たれる。何かの腹いせのように。

　けれどもそれをどうすれば痛みが少なく済むかは、身体が熟知している。

　異物を受け入れる痛みに収縮しそうな身体を、意識的に息を吐くことで弛緩させ、間髪入れずに始まった抽挿を、自らも緩く腰を使って悦い場所へと導いた。

　今はただ、快感を追うことに集中すればいい。先刻までの交わりの続きだと思えば、すぐに悦くなれる。

　そうすることが一番、心も身体も受ける傷が浅く済む。

「んっ、っ、ぁっ、……七斗……」

　そっと、弟の名を呼ぶ。

　名を呼んだことで、今までずっと、こうなることを想像することさえ躊躇（ためら）われた、大切な存在が。

　日々大きくなって行くのを感じながら、心の奥底にしまい込むことで直視することを避けてきた感情が。

　予期しなかった形で七月の眼前に引きずり出される。

　『ずっと二人のままじゃ、いらんないもんな……』

　この言葉が七月の心に鍵を掛けていた。

　この身体の深い部分に七斗を感じることで、今それが、こじ開けられる。

　こんな形でさえなければ。

　――七斗、……俺はきっと、ずっと前から……。

　いつも七斗の傍にいて。

　こうやって交じり合いたいと願っていた。

　七斗に選ばれ、七斗の隣にいることを許される唯一の存在になりたかった。




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