2ntブログ

誰もがきっと、誰かの。(5)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「生(いくる)も色々楽しめただろ? 俺も楽しかったよ」
「……、……そっか。栄転だね、おめでとう」

 震えそうになる身体から絞り出すことができた言葉は、それだけだった。

「あんまたくさんあるわけじゃないけど、荷物そろそろまとめないとなんねぇし、帰るよ」

 来たときと同じ、スーツ姿に戻った田辺は最後に生にいつもの笑みを向け、じゃあな、と一声残して部屋を出て行った。生もそれに笑みで応え、けれども黙ったまま、揺れる瞳で振り返ることのない田辺の背中を見送った。

 引き止めることもできないまま。

 ゆっくりと閉まるドアの音が、静寂に響く。

 一つ、ため息を吐いた。

 ベッドに身体を起こしたまま、じっとシーツを見つめていると、今までの田辺とのことが思い返される。

 ――そういえば『好き』って、言われたこと、なかったな……。

 田辺は今までずっと、身勝手にも思えるタイミングで、一方的に生を誘うだけだった。生はただ彼からの連絡を待っているだけの日々。

 それでも生は田辺をただ一人の相手と信じ、彼とは恋人と呼べる関係なんだと思っていた。

 好きだった。

 明るくて、少し強引だけど、それを人から許されてしまうような、甘え上手なところもあった。

 いつも人に囲まれている彼が自分に触れるなんて、夢のようだと思っていた。

 ――ほんとに夢、だったんだな……。

 見渡せば、投げ捨てられたように床に落とされている眼鏡。

 重い身体でなんとか立ち上がり、それを拾い上げた。

「明日の準備、しないと」

 眼鏡をかけて、のろのろと服を着込む。

 今は梅雨時で、雨も多い。

 生はコインランドリーで乾燥させ持ち帰っていたウェアを一枚ずつ、丁寧にたたみ始めた。



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コメント
秘密拍手コメレスでし(*´∀`)あ(・∀・)り(・∀・)が(・∀・)と(・∀・)う!ございマス!
>秘密拍手コメYさん(*´∀`)

生、カワユさありますですかまりがとんございますーっ(´Д⊂ヽ
ヨワイ30にしてマジメで天然なカンジに…
と思ってますが天然なトコが出せずに終わりそうすorz
ツンデレ、私もダイスキす(*´∀`)人(´∀`*)
けど書くとなると難しいんすよね
ウチの智裕が一応そうなんすけど
落ちる瞬間、みたいなさじ加減がなかなか(全ては私の未熟さ故orz)
マジメ故薄幸な生みたいのを感じていただけて
ウレシスでし(´Д⊂ヽ
引き続き生(と望木)(と私)を見守ってやってくだたい(*´∀`)

********************************************************

>秘密拍手コメo-iさん(*´∀`)

プライドというよりすぐにそれを受け入れてしまう、ってカンジ
なんじゃないでしょか、諦めがイイ、みたいな…?
なんで営業に移されても天命(?)と諦めて
そこでまたがんがってみるかとマジメに取り組んでみてる
…みたいなイメージなんすけど、どうでしょうw
ああでもそこには傷つきたくない、って感情があるんすね
強いようで弱いんすかね
追いすがって食い下がったらますます傷つくだけすもんね
なんかo-iさんに教えていただいたカンジす(*´Д`)
o-iさんもなかなかなんてカワユスな……(*´Д`)
私はガッツリ肉食なんで真逆だたりするす\(^o^)/
こゆ気分の時に他にやんないといけないことがあるのは
少しが気がまぎれてイイすよね
がんがってしまったあとの反動が怖そうすけど(;´Д`)
ほんとになんだかなぁと思いながら書いてますが(すいません)
生(と望木)(と私)を引き続き見守ってやってくだたい(;´Д`)
今日もコメまりがとんございますた!

2009/10/01(木) 18:39 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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