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誰もがきっと、誰かの。(8)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 いつものように丁寧な一礼とともにジムを出た生は、けれども建物を出ると、晴れない気持ちに肩を落としてため息を吐いた。

 今日はいつもと違い、このまま直帰するため社用車には乗って来ていない。

 雨の中、生は傘を差して歩き出した。

 ジムから少し行くと、駅へと続く川沿いの道に出る。建物に挟まれてはいるが、車道がなく、街灯もまばらな歩道だけの薄暗い堤防の道。生は重い足どりを、一歩ずつ踏みしめた。

 早く結果を出したいがために、自分ひとりの判断でやってしまったことが悔やまれる。

 けれども営業部に移ってたった二か月にも満たない自分の企画が通っただろうか。あるいは貸与に関わる費用に対して決済が下りただろうか。

 答えはいずれも否、だ。

 結果を出せば、どんな形でも認められるだろうと思っていた。

 ――あと少し、だったのにな……。

 悔しさに、唇を噛む。

 微妙な歩きにくさを感じ、立ち止まって足元を見下ろすと、生の気持ちに追い討ちをかけるかのように、革靴の靴ひもが切れていた。

 ――ああ……。

 疲労と虚しさが、一気に押し寄せる。

 このままうずくまり、嗚咽したい衝動に駆られたが、それもままならず歯を食いしばって肩で息をした。

 自分の身の置き所を求めるように、視線を彷徨わせる。

 ふと脇の、暗闇に気づいた。その闇へと続く、舗装された細い道。

 生は吸い寄せられるように、その道を入った。

 闇の中はけれども拓けた場所で、目を凝らしてみるとそこは、川の水を引いて作ったらしい池を中心とした小さな公園だった。

 日中は明るい日差しが当たるであろうそこは、今は形ばかりとも思える外灯があるのみで、足元をよく見なければ池との境目が分からないほどに、どこもかしこも漆黒に溶け込んでいる。

 生は池の畔(ほとり)に歩み寄り、その暗闇をじっと見つめた。


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