2ntブログ

誰もがきっと、誰かの。(16)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「……っと、すいませ……あ」

 避けようとしたが間に合わず、彼と肩が触れ合う。その拍子に彼が抱えていた箱から数枚のスポーツウェアが零れ落ちた。

「あ、すいません」

 くたびれた様子のそれらは、恐らくジムのメンバーが使ったものなのだろう。

 そういえば、新商品のキャンペーンとしてナシノがウェアの貸与をやっていると聞いたことがあったと思い出す。

 貴史は直ぐその場にしゃがみ込み、それらを拾い上げようとした。

「あ、申し訳ありません」

 貴史のその手が、彼の丁寧な言葉とともにそっと握られた。

 その手のひんやりとした感触に、貴史の胸はかっと熱くなる。

 ――どんな表情(かお)、してんだろ。

 間近で表情を見てみたい。

 貴史はその欲求のままに、彼をそっと覗き込んだ。

「すいませんありがとうございます。大丈夫です」

 貴史を手で制し、誠心誠意の営業スマイルを貴史に向けた彼は、自ら落ちたウェアを拾い上げた。

 眼鏡の奥に潜む彼の瞳は、一石を投じれば静かに波紋を広げる、澄んだ湖面のようだった。

 そしてそのどこかぎこちなさを感じさせる笑顔。それさえも、貴史の心を掴んだ。

 それならば。

 彼の本当の笑顔はどんなにか。

 ――綺麗だろう。

 ウェアを拾う彼のその横顔に、釘付けになる。

 せっかくの彼との接触、少しでも繋がりを持ちたかった。

「――最近よく見かけますよね」

 少し軽いかもしれないが、とっかかりの常套句。それとなく、彼を見つめる視線に意味を込めて。

 けれども彼は、ただ真っ直ぐに貴史にその瞳を向け、搾り出すような笑みを返した。


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gdgdですいませ……orz



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