2ntブログ

誰もがきっと、誰かの。(22)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 零れた涙の行方を追っていたわけではないが、涙の落ちた場所を見るように俯いたまま、顔が上げられずにいた。

「あのさ」

 再び声を掛けられて、恐る恐る顔を上げる。暗闇の中でも分かる、彼の精悍な顔立ち、切れ長の目。その中央に存る黒い瞳は真っ直ぐに、生を映していた。

「何があったの。俺でよければ話、聞くよ」

 決して高くなく、低すぎでもない、大きくなく、小さくもないのに芯が通ったような彼の声は、耳に心地好かった。その声が、生の身体にすっと染み込んでくる。

 彼の顔を、じっと見た。

 失った恋。認められない仕事。

 思いは空回りし、そして不要だと、突き放された。

 大恋愛でなくていい。大仕事でなくていい。ただ一途に誠実に、事を成し遂げたいと思っていただけなのだと。

 ずっと、誰かに聞いてもらいたかった。

 慰めて欲しいとまでは言わないがただ、理解るよ、と一言掛けてもらえたなら。

 唇を、小さく開いた。

 生の言葉を待つ黒い瞳。

 見詰め返すと、親身であろうと思う彼の気持ちの分だけ、申し訳なさが立った。

 彼に、自分のつまらない話を聞いてもらったところできっと、煩わしい思いをさせるだけだろう。

 そもそも彼は偶然ここを通りがかっただけの、初対面の相手ではないか。

「そんな……見ず知らずの方に、話しても。ご迷惑ですから」

 少しの躊躇のあと、そう一言返し、唇を結んだ。

 彼の表情が、気のせいかほんの一瞬翳りを見せた。ずっと生を捉えていた視線が外れ、彼は僅かの間目を伏せた。けれども意を決したように視線を上げ、再び生を捉えた時にはその翳は、彼の表情から消えていた。



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コメント
とうとう認識ありの対面ですね~(≧∇≦)
あまりの認識不足に、一生懸命で前しか見れてないのはわかってはいたのですが、やっと対面したのにやっぱり望木さんを覚えてない様子に生たんのメガネの度数合ってるのか(-o-;)!?と少々不安に思ってしまいました(笑)

そんな彼にどんなふうに接するのか…望木好きとしては気になりますー!
マジシャン七月が認める彼のことだからきっと沈んだ生たんの気持ちも体も満たしてくれることでしょう~(´∀`*)
2009/10/18(日) 09:01 | URL | chihiron #-[ 編集]
あいー(*´∀`)ごたいめんでごじゃいやす!
>chihironさん(*´∀`)

生のメガネの度数wwwwww
ほんとすね、若干度数が合っていないのかもでごじゃいやすw
それで貴史の顔が覚えらんなかた、とかw
じゃないとムリありすぎ、みたいな気がしてきますた
いくらなんでも、みたいなwwwwwworz

通りすがりに出会った人を家につれて帰るのも、
初対面(と思い込んでる)人の家に付いて行こう、と思うのも
なんだかリアルじゃほぼありえないことなんで
ムリムリごり押し感イパイな気がして
アワアワ(;´Д`)なりながら書いてるすorz
なんとか当初予定した流れどおりに持ってイきたアッ――!いと
思ってますんで!
引き続きのお付き合いよろすくおながいします~(*´∀`)

まりがとんございますた!
2009/10/18(日) 22:50 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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