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空に、白い雪(6)(完)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「お前がいれば、野球なんかなくったっていい。お前のいない四年間、俺が……どんな思いでお前を探してたと思ってんだよ」

 水口が千景を抱き締めようとその力強い腕を伸ばした。

「千景、お前だって……」
「誰がそんなことっ……! 勝手に決めつけるなっ」

 ばし、と乾いた音を立てて千景がその腕を振り払う。

 ――チカ兄……。

 和大は、両手を握り締めた。

「チカ兄……」
「カズちゃん……」
「なんだ、またお前かよ」

 和大の存在に今気付いた水口が、じろり、と和大を睨みつける。

「水口さん、チカ兄、あんたのこと、好きだから……。チカ兄に、逃げなくていい、って言ってやってよ」
「カズちゃん……」
「チカ兄、オレ、帰るね。コーヒー、ごちそうさま」

 和大は、震える肩を両手を強く握り締める事で堪えて、そのまま部屋を後にした。





 あれから三ヵ月。スポーツニュースからは水口タケルの引退のニュースは流れてこない。

 あのあと一週間して、千景は部屋を出て行った。千景は餞別にアコーディオンを和大に渡そうとしたが、大笑いして和大はそれを断った。代わりに一番小さいカンバスに描かれた青空の絵を貰った。

 ――チカ兄、どうしてるかな。

 今でもこんな晴れた日は、遠回りして土手を通って帰る。でももうアコーディオンを弾く千景の姿を見つけることは、ない。

 家に帰ると、郵便受けに絵葉書が入っていた。

 葉書には、青空の絵。千景が描いたものだ。

 和大は着ていた学ランのポケットにそれを無造作に突っ込むと、今来た道を戻って、河原の土手に向かった。

 最後にこの土手で千景と会った場所に腰を下ろして、ポケットから葉書を取り出した。
 芸術家特有の、奇妙な形をして踊る文字列を目でたどる。

 ――かずちゃん、元気? 色々ありがとう。問題はまだ山積みだとは思うけど、逃げないでちゃんと乗り越えていこうと思う。かずちゃんの言うとおり、もっと早くそうしたらよかったかもね。今はタケルの所に住んでる。よかったら、一度遊びにおいでね。

「――ちかげより、か」

 じっと手のひらの中の絵を見つめた後、和大はそれをびり、と何度も破った。

「だーれが、わざわざチカ兄の幸せそうな顔なんか見に行くかよっ」

 和大は小さく千切った紙切れをぱっと空に向かって投げた。

 ――よかったな、チカ兄。

 冬の初めの晴れ渡った空に、まだ早い雪がはらはらと舞った。


おしまい

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コメント
カズちゃんの失恋で終わったか・・・切ないね;;
こうなったら、千景さんに幸せになってもらわないとね。
まあまあ、カズちゃん、君はまだ若いし、これから新しい恋もあるよ、きっと、うん・・・
ベラ様がちゃんと書いて下さるから、うん。
ねえ?
2007/11/13(火) 01:44 | URL | 平和堂書店 #-[ 編集]
まりがとんv
和大はもうちょい大人になって
いつか幸せにしてやりたい
登場人物の一人です。
いつかね、和ちゃんv

2007/11/13(火) 10:40 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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2007/11/13(火) 11:58 | | #[ 編集]
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2007/11/14(水) 14:36 | | #[ 編集]
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