――今、何時だろう。
枕元に視線を遣ると、ヘッドボードに黒い目覚まし時計が見えた。
眼鏡はシャワーを浴びる前、脱衣所で外したきりだ。
眼鏡のないぼんやりとした視界では、デジタルディスプレイが示す時刻は見えない。時計を手に取ろうと手を伸ばした時、その小さなベッドの揺れで目覚めさせてしまったのか、貴史がゆっくりと瞼を上げた。
枕元に視線を遣ると、ヘッドボードに黒い目覚まし時計が見えた。
眼鏡はシャワーを浴びる前、脱衣所で外したきりだ。
眼鏡のないぼんやりとした視界では、デジタルディスプレイが示す時刻は見えない。時計を手に取ろうと手を伸ばした時、その小さなベッドの揺れで目覚めさせてしまったのか、貴史がゆっくりと瞼を上げた。
「ん……、生……?」
貴史は眉間に微かな皺を刻み、まだはっきりしない視界の中で生を探すように、手探りで生の背に触れた。
一夜で覚えてしまった、貴史の手が生に与える快感と、生が起きてから至った思い。ジレンマのようなふたつが生を戸惑わせ、生の身体はびくりと強ばった。それを手のひらで察したのか、貴史は生の真意を窺うように、じっと生を見た。
まるで時が止まったように、気まずい沈黙が二人を包む。
「あ、の……起こして、ごめん」
生がなんとか言葉を絞り出すと、張り詰めていた空気がふと、和らいだ。貴史がどこか安堵したように笑い、ようやく再び時が流れ出す。
「ん……ダイジョブ。生は? 身体……平気?」
「うん……」
「そっか、良かった……」
流れ出した時の中、貴史が穏やかに微笑む。
貴史のその笑みに、思わず見入る。
貴史が好きだと、不意に思った。
「――何時?」
貴史が生の背を撫でながら、起き抜けの声で問う。
少しかすれた声。
生の鼓膜を擽り、ざわざわと、皮膚の下が静かに波打つ。
「時計」
「……え?」
「見ようとしてたんだろ?」
「あ、……うん」
言われて生は、我に返ったように時計を手に取った。
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貴史は眉間に微かな皺を刻み、まだはっきりしない視界の中で生を探すように、手探りで生の背に触れた。
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まるで時が止まったように、気まずい沈黙が二人を包む。
「あ、の……起こして、ごめん」
生がなんとか言葉を絞り出すと、張り詰めていた空気がふと、和らいだ。貴史がどこか安堵したように笑い、ようやく再び時が流れ出す。
「ん……ダイジョブ。生は? 身体……平気?」
「うん……」
「そっか、良かった……」
流れ出した時の中、貴史が穏やかに微笑む。
貴史のその笑みに、思わず見入る。
貴史が好きだと、不意に思った。
「――何時?」
貴史が生の背を撫でながら、起き抜けの声で問う。
少しかすれた声。
生の鼓膜を擽り、ざわざわと、皮膚の下が静かに波打つ。
「時計」
「……え?」
「見ようとしてたんだろ?」
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