「――いい?」
なんでもないことのように、貴史が片眉を上げて生に了承を求める。
貴史は、生の心にすっと、入ってくる。
生の求めるものを、黙って差し出してくれる。
今だって。
生も貴史が欲しいと願っていることを知りながら、貴史は敢えてそう言っているのかも知れない。
それなら、それに甘えてしまおう。
なんでもないことのように、貴史が片眉を上げて生に了承を求める。
貴史は、生の心にすっと、入ってくる。
生の求めるものを、黙って差し出してくれる。
今だって。
生も貴史が欲しいと願っていることを知りながら、貴史は敢えてそう言っているのかも知れない。
それなら、それに甘えてしまおう。
「うん……」
少しの間をおいて、生がこくりと頷くと、貴史はどこか眩しそうに生を見て笑った。
起きよっか、とベッドを抜け出した貴史に手を引かれ、生もベッドから出た。
立ち上がると、当然だが二人とも一糸纏わぬ姿だった。
照れくさくて、どうすればいいのかと自分と貴史を交互に見ると、貴史が笑いながらクローゼットから新しい下着を取り出し、俺のだけど、と部屋着も出して、それらを生に手渡した。貴史が自分の衣服を手早く着込むのを横目に見ながら、生もありがとう、という言葉とともに受け取ったそれらを遠慮がちに着込んだ。
「今日は土曜だけど、生、仕事とかは?」
二人でダイニングに出て、くわえ煙草で冷蔵庫を覗き込みながら貴史が聞いた。その姿に思わず見入っていた生は、貴史の言葉に我に返った。
「――あ」
「やっぱなんか仕事、あんだ?」
くわえていた煙草を指で摘み、貴史が生を見る。
今まで二か月と少し。土日も欠かさずジムにウェアを届けてきた。それも昨日で終わったことを思い出し、いや、と首を振り、貴史に笑みを作ってみせた。けれども浮かべる笑みはぎくしゃくと、どこかぎこちない。今まで自分を信じてやってきた仕事が評価されずに終わったのだからすぐには明るく笑うことはできないのは仕方ないかもしれないが、その笑みは、貴史には寂しい笑みにも映ったかもしれない。
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少しの間をおいて、生がこくりと頷くと、貴史はどこか眩しそうに生を見て笑った。
起きよっか、とベッドを抜け出した貴史に手を引かれ、生もベッドから出た。
立ち上がると、当然だが二人とも一糸纏わぬ姿だった。
照れくさくて、どうすればいいのかと自分と貴史を交互に見ると、貴史が笑いながらクローゼットから新しい下着を取り出し、俺のだけど、と部屋着も出して、それらを生に手渡した。貴史が自分の衣服を手早く着込むのを横目に見ながら、生もありがとう、という言葉とともに受け取ったそれらを遠慮がちに着込んだ。
「今日は土曜だけど、生、仕事とかは?」
二人でダイニングに出て、くわえ煙草で冷蔵庫を覗き込みながら貴史が聞いた。その姿に思わず見入っていた生は、貴史の言葉に我に返った。
「――あ」
「やっぱなんか仕事、あんだ?」
くわえていた煙草を指で摘み、貴史が生を見る。
今まで二か月と少し。土日も欠かさずジムにウェアを届けてきた。それも昨日で終わったことを思い出し、いや、と首を振り、貴史に笑みを作ってみせた。けれども浮かべる笑みはぎくしゃくと、どこかぎこちない。今まで自分を信じてやってきた仕事が評価されずに終わったのだからすぐには明るく笑うことはできないのは仕方ないかもしれないが、その笑みは、貴史には寂しい笑みにも映ったかもしれない。
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