取った眼鏡をテーブルに置き、貴史が生を食い入るように見詰めながら身を乗り出す。生はただ、近づいてくる唇を、じっと待った。
「眼鏡外した生の顔、なんか……誘ってるみてぇ」
「そんなつもりは……」
「ねぇんだよね、わぁってるよ。わぁってんだけど、その顔、スゲェそそられるんだよな……」
「眼鏡外した生の顔、なんか……誘ってるみてぇ」
「そんなつもりは……」
「ねぇんだよね、わぁってるよ。わぁってんだけど、その顔、スゲェそそられるんだよな……」
早く昨日の続きしてぇな、と遠慮がちに囁いて、貴史は生のうなじに手を掛けた。唇を寄せ、しっとりと、唇が重なる。
「ん……、……」
起きてすぐのキスと同様、互いを確かめるような触れるだけのキスは、じわりと身体に広がるような甘さを生の唇に残す。
近づいた時と同じ速度で貴史の唇が離れると、少し遅れてうなじにあてがわれていた手が、名残惜しそうにそこを撫でてゆっくりと、生から離れて行った。
テーブルの眼鏡が貴史の手によって再び生に戻ると、また視界がクリアな世界を映した。
「ごめん、食おうか。冷めるよね」
貴史は小さく肩を竦め、食ってみて、と少しはにかむように笑った。
感じる貴史の視線に少し緊張しながら、スプーンでスクランブルエッグを掬って口に運んだ。
口に含めた途端、口の中でバターの香りがふわりと広がり、そして舌の上を舐めるようにねっとりと、程よい半熟の卵がとろける。
貴史が自信があると言うのも頷ける、プロの手による舌触りだ。
「すごい、ほんとに美味しい……」
お世辞抜きで本当に美味しいそれを、感嘆しながら思ったままを口にした。
「……マジ?」
「ん、マジで。すごく美味しい」
貴史の口調に合わせて答えると、貴史は「そういうノリもイけんだ」と嬉しそうに笑った。
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「ん……、……」
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貴史が自信があると言うのも頷ける、プロの手による舌触りだ。
「すごい、ほんとに美味しい……」
お世辞抜きで本当に美味しいそれを、感嘆しながら思ったままを口にした。
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