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誰もがきっと、誰かの。(59)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「なんつーか……」

 貴史が片手で口元を覆った。そのまましばらくじっと黙り、あー……、と感じ入ったような声を零しながらその手を外した。

「ごめん生、それスゲェ可愛い……」
「――え?」
「生を騙した先輩のことは殴ってやりたいとも思うけど、ちょっといたずら心に生にそんなこと言った先輩の気持ちもなんかスゲェ分かる、気がする」

「……そう、なんだ」
「できれば俺が、その先輩になりたかったくらいだよ。その素直な感じ、スゲェ可愛いし。きっとその先輩も、生のことスゲェ可愛い、って思ったんだろうな」

 悔しそうにぎゅっと両目を閉じて、貴史が「見たかったな……」と口惜しそうに呟く。

「僕やっぱり騙されやすい……のかな。真面目過ぎなのかな、とは自分でも思ってはいるよ」

 だから失敗するのだろうか。恋愛も、もしかしたら仕事も?

「鋭い洞察力と判断力で、なんでも器用にこなせたらいいんだけど……」

 そうすれば仕事も、恋愛も、うまくこなせることができるだろうか。

 少し、しゅんとした。

 そんな生の様子に、貴史が少し慌てたように首を横に振った。

「真面目で悪いことなんて、何もねぇって。むしろ人の心を打つっつうかさ。生はスゲェ素直で真っ直ぐで、いつも一生懸命、なんだよね。なんか生のそういうとこ、俺スゲェいいと思うよ。いい、っつうか……、……。絶対、誰かがちゃんと見てるよ」
「そ、なのかな」
「だって実際俺も……」
「貴史、が?」
「……や、生のそういうの聞いてると、俺ももっと真面目に頑張んねぇとな、って思う、つかさ」

 貴史はほんの一瞬言葉を選ぶように声を途切れさせ、そして生から視線を外してトーストの最後の一口を頬張った。それを静かにコーヒーで流し込むと、喉仏が大きく上下する。

 もう少し、貴史の言葉が欲しいような気がして、生は上下するその喉をじっと見ていた。



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