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誰もがきっと、誰かの。(62)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 各々の食器を持ち、二人で対面式のキッチンに向かう。

 貴史は持っていたものをシンクに置くと、スポンジと洗剤の位置を生に教えて、シンクの横、ガスレンジにもたれて立った。生の隣で生を軽く覗き込むように見つめながら、貴史はまた、煙草を咥えた。

 生は貴史の視線を感じながらスポンジに洗剤を落としたが、少しの緊張に、思わず手元がぎくしゃくと強張ってしまうのが自分でも分かる。

「あの」
「ん?」

 貴史を見ると、すぐに笑みが返ってくる。

「ゆっくりしてくれてたらいい、よ。椅子に座ったり」

 元々貴史にお礼をするつもりで申し出たことだ。立っていては働いているのとあまり変わらない気がする。貴史の視線に緊張してしまうということもあるが、彼を立たせたままにしておくことが少し申し訳なくもあった。

「邪魔?」

 小さく首を傾げて貴史に聞かれる。

「そんなことは……」

 見惚れてしまいそうな笑顔でそう聞かれれば、うんと頷けるはずもない。

 それに恐らくこの緊張は、かつて田辺の視線を感じた時と同じ、今は貴史に恋しているからだろう。

 そしてその先にあるのは、淫らな欲望。

 それはきっと、出逢って丸一日にも満たない相手に持つべき感情ではない。

 それを貴史に見抜かれてしまうのが、怖いだけなのかも知れない。

 じっと、貴史を見た。

「じゃあ、横にいる」

 にこりと笑って一言そう答えると、貴史は咥えた煙草に火を点けずに、唇に挟んだまま上下させた。

 目線を手元に戻し、ぎこちない手つきでスポンジを泡立て、皿を洗い始める。

 側に貴史の存在がありながら、ただ彼の視線を感じるだけの無言の空気に居たたまれない気持ちになりそうになる直前、貴史が唇に挟んでいた煙草を指で摘み、口を開いた。



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