――色々。
その中に、貴史は入っているのだろうか。
貴史の言葉が本当なら、七月はその「色々」の頃、貴史を「食おう」としないはずがない。そしてその時貴史に決まった相手がいなかったのなら、それを断る理由もない。こんなに親しげで、色々なことを知っていそうな間柄で貴史の片思いの相手を知らないと言うことは。
――もしかして言えない相手、だから?
その中に、貴史は入っているのだろうか。
貴史の言葉が本当なら、七月はその「色々」の頃、貴史を「食おう」としないはずがない。そしてその時貴史に決まった相手がいなかったのなら、それを断る理由もない。こんなに親しげで、色々なことを知っていそうな間柄で貴史の片思いの相手を知らないと言うことは。
――もしかして言えない相手、だから?
七月をじっと見る。
常に流れるような仕草。その一つ一つが人を魅了するような色気を放つ。ただ真面目なだけで何の取り柄もない自分には、ないものばかりだと、それがないものねだりの劣等感だと分かっていながらその感情を抱かずにはいられない。
貴史が好きになるのに、至極相応しい相手に思えた。
貴史に視線を移す。
貴史の、七月を見つめる瞳は、彼にかける言葉とは裏腹に、穏やかで暖かく、包み込むように優しい。
――ああそうか。
貴史の片思いの相手は。
――彼、なのかもしれない。
そう思い至ると、全て合点がいった。
「――それもこれも全部運命だったんだよ」
「それは今お前が幸せだから、そゆ事だって言えるんだろーよ」
皿の上のピザをかじり始めながら、貴史は苦笑とともにどこか投げやりに七月の言葉に応える。
「望木だってあるよ、運命」
「そっかなぁ」
「生は? あると思う?」
「え?」
不意打ちのように七月から突然振られた話に面食らって、生は数度、瞬きした。
「運命。そう言うの、信じる?」
七月が向けた問いによって、ふたりの視線が、生に注がれた。
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常に流れるような仕草。その一つ一つが人を魅了するような色気を放つ。ただ真面目なだけで何の取り柄もない自分には、ないものばかりだと、それがないものねだりの劣等感だと分かっていながらその感情を抱かずにはいられない。
貴史が好きになるのに、至極相応しい相手に思えた。
貴史に視線を移す。
貴史の、七月を見つめる瞳は、彼にかける言葉とは裏腹に、穏やかで暖かく、包み込むように優しい。
――ああそうか。
貴史の片思いの相手は。
――彼、なのかもしれない。
そう思い至ると、全て合点がいった。
「――それもこれも全部運命だったんだよ」
「それは今お前が幸せだから、そゆ事だって言えるんだろーよ」
皿の上のピザをかじり始めながら、貴史は苦笑とともにどこか投げやりに七月の言葉に応える。
「望木だってあるよ、運命」
「そっかなぁ」
「生は? あると思う?」
「え?」
不意打ちのように七月から突然振られた話に面食らって、生は数度、瞬きした。
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