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誰もがきっと、誰かの。(70)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 運命。

 きっと、ほんの少し。

 貴史に出逢ったことが、運命ならいいと思った。もしそうなら、失った恋にも意味があったと思えたかもしれない。

 だけど。

「どうかな。あるのかもしれないけど、単なる思い過ごしだったり、もしかしたら見過ごしてたり、運命だって見分けるのは難しいよ。少なくとも、僕にとっては」

 自嘲するような笑みを浮かべ、呟くように答えた。

 何故か少し、泣きそうな気持ちになる。

 ただ、両の手で包んだマグカップの温かさが、泣き出しそうな生の心を慰めてくれていた。

「なんかそれ、スゲェ分かるよ。俺もあると思いたいけど、結果出てみねぇと分かんねぇよな。なんつーか……願望に結果が伴ったら運命? って思うんじゃねぇの、とか、思ったりな」

 貴史も、どこかしんみりとした様子で、生に相槌を打った。

「それは言い得てるかもだね。俺も、言われてみればそうかも知れないし」

 七月ただ一人だけが、どこか鷹揚にも見える暢気な声で大きく頷いて、またピザを頬張った。

「ところで生は何してる人?」

 どちらから答えをもらっても構わない、といった様子で七月が貴史と生、二人を交互に見ながら問いを向けた。

「あ、えっと……」
「株式会社ナシノで営業を、やってます」

 貴史がどう答えたものかと、言葉を濁すのを遮って、生自ら問いに答えた。

 貴史には、生がどこで、何を、仕事としているのか、まだ話していない。

 貴史と生が、それぞれの仕事さえ知らない間柄だと、七月に知られたくないと思ったのは、きっと小さな対抗心。

 生のそんな小さな心の機微など気付きもしない様子で、七月はへえ、と表情を明るくした。



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