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誰もがきっと、誰かの。(73)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 玄関口までふたりで七月に付き添い、七月を見送った。玄関ドアのノブに手をかけた七月が振り返る。

「じゃあ、お邪魔しました」
「いえ、僕のほうこ……」
「ほんとだよ」

 恐縮して頭を下げる生の言葉に重ねるように、貴史が忌々しげに七月に声を返した。けれども七月は全く気を悪くした様子もなくくすりと笑って、少し意味深に貴史を見た。

「じゃあね望木。望木とはまた月曜に。今度から来るときは事前に連絡するようにするね」
「それが普通だっつうの」

 噛み付く勢いで言葉を返す貴史の形相にも、七月はそっか、と笑い、じゃあまた、ともう一度生に笑みを向けた。そしてまた、視線の流れさえ流麗に、七月はふたりに背を向けた。

 廊下を歩く七月の背を、貴史が本当に帰って行ったのかを確認するようにドアから半分身体を出して見送り、そしてやっとほっとしたように大きく息を吐きながら、閉めたドアに鍵をかけた。

「なんか……どっと疲れた」

 ごめん生、と申し訳なさそうに貴史が首を竦めて生を見る。

「僕こそ。僕がいなければ、もっとゆっくりできたかも知れないのに」

 笑みを浮かべて緩く首を横に振ると、貴史が僅かに驚いたように眉を上げた。

「は? 何言ってんの生、邪魔しに来たのはあいつの方じゃん。こっちこそ、なんかごめん。内輪話ばっかだったよね」
「そんなことないよ。ちゃんと僕にも分かるように話してくれてたよ。……なんて言うか、凄く魅力のある人、だよね、彼」
「まあね、見た目もあんなで、しかもそれ自覚してて、弟とくっつくまではほんとタチ悪いくらい上手く遊んでたけど、今は一途にやってるみたいだし。弟は昆虫カメラマンらしくて、まだ助手ならしいんだけど、しょっちゅう撮影旅行で家空けるみたいでさ。七月一人で退屈だったんだろうね。迷惑極まりねぇけど」

 許してやってね、と貴史は苦笑した。


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