田辺にまだそのつもりがあるのなら、生の方には田辺が言うような半端な関係を持つことはもうできないと、きちんと話さねばならないだろう。
いずれにしてもこのまま貴史の部屋に居続けることもできない。今夜には自室に戻るしかないのだから。
――はっきりと、……。
会って話すべきことでもないのかもしれないが、いい機会だとも言える。
いずれにしてもこのまま貴史の部屋に居続けることもできない。今夜には自室に戻るしかないのだから。
――はっきりと、……。
会って話すべきことでもないのかもしれないが、いい機会だとも言える。
「……、……ん」
結局頷き、頷いてしまった自分に僅かな嫌悪を覚えて、生はぎゅっと、目を閉じた。
通話を終え、携帯を内ポケットに戻して、生は静かに寝室のドアを開けた。
廊下に貴史の姿はなく、彼を探してダイニングへと戻る。すると貴史は、先ほどのテーブルを前に、寝室側に背を向けて椅子に座っていた。何を見ているのか、あるいは何も見ていないのか、リビングの向こう、窓の外を眺め、テーブルに片肘を突いてぼんやりと煙草をくゆらせるその後ろ姿は、なぜか少し寂しそうにも見えた。
「あの、……」
その背に遠慮がちに声をかけると、振り返った貴史がふと笑んだ。
その姿に魅せられて、立ち竦む。
貴史が好きだと、改めて思うとまた、胸が締め付けられた。
「電話終わった?」
「あ……、うん。お待たせ」
頷くと、貴史が吸っていた煙草を灰皿でにじり消した。そのまま立ち上がり、生の前まで歩み寄る。
「電話、誰からだったか……聞いていい?」
生を責めるような口調では決してない。生の気持ちを推し量るように小首を傾げて、貴史の黒い瞳が生を覗き込む。
「ぁ……、えっと……」
「前の男、とか?」
言い淀む生の様子から返って悟ったのか、貴史がごく穏やかな声で、けれども核心を突く問いを生に向けた。
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結局頷き、頷いてしまった自分に僅かな嫌悪を覚えて、生はぎゅっと、目を閉じた。
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貴史が好きだと、改めて思うとまた、胸が締め付けられた。
「電話終わった?」
「あ……、うん。お待たせ」
頷くと、貴史が吸っていた煙草を灰皿でにじり消した。そのまま立ち上がり、生の前まで歩み寄る。
「電話、誰からだったか……聞いていい?」
生を責めるような口調では決してない。生の気持ちを推し量るように小首を傾げて、貴史の黒い瞳が生を覗き込む。
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