2ntブログ

誰もがきっと、誰かの。(77)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 田辺にまだそのつもりがあるのなら、生の方には田辺が言うような半端な関係を持つことはもうできないと、きちんと話さねばならないだろう。

 いずれにしてもこのまま貴史の部屋に居続けることもできない。今夜には自室に戻るしかないのだから。

 ――はっきりと、……。

 会って話すべきことでもないのかもしれないが、いい機会だとも言える。

「……、……ん」

 結局頷き、頷いてしまった自分に僅かな嫌悪を覚えて、生はぎゅっと、目を閉じた。

 通話を終え、携帯を内ポケットに戻して、生は静かに寝室のドアを開けた。

 廊下に貴史の姿はなく、彼を探してダイニングへと戻る。すると貴史は、先ほどのテーブルを前に、寝室側に背を向けて椅子に座っていた。何を見ているのか、あるいは何も見ていないのか、リビングの向こう、窓の外を眺め、テーブルに片肘を突いてぼんやりと煙草をくゆらせるその後ろ姿は、なぜか少し寂しそうにも見えた。

「あの、……」

 その背に遠慮がちに声をかけると、振り返った貴史がふと笑んだ。

 その姿に魅せられて、立ち竦む。

 貴史が好きだと、改めて思うとまた、胸が締め付けられた。

「電話終わった?」
「あ……、うん。お待たせ」

 頷くと、貴史が吸っていた煙草を灰皿でにじり消した。そのまま立ち上がり、生の前まで歩み寄る。

「電話、誰からだったか……聞いていい?」

 生を責めるような口調では決してない。生の気持ちを推し量るように小首を傾げて、貴史の黒い瞳が生を覗き込む。

「ぁ……、えっと……」
「前の男、とか?」

 言い淀む生の様子から返って悟ったのか、貴史がごく穏やかな声で、けれども核心を突く問いを生に向けた。


←76へ / →78へ
←1から読む


ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
↑ランキング参加中す。よければクリック入魂一押ししてください。
 書く意欲に繋がってます(*´∀`)
携帯からはポイント反映されないことがあるようです(090907現在)
ぜひパソからの一押しお待ちしてます(*´∀`)



コメント
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 

 | Copyright © がっつりBL的。 All rights reserved. | 

 / Template by 無料ブログ テンプレート カスタマイズ