初めて態度で、田辺を拒絶した。
「……、……っ」
ほんの一瞬驚いたように目を見開き、それから酷く傷ついた表情をして、田辺が生から手を離す。
少しの間、眉を寄せて生を見つめ、それでも生から返ってくるのは無言ばかりと察すると、田辺は更に顔を歪めた。
小さく唇を噛み、それからふい、と顔を背けると、田辺は生への名残惜しさを振り切るようにくるりと生に背を向け、駅の方向へと走り去って行った。
去り際、田辺から一度、鼻を啜る音が聞こえた気がした。
「……、……っ」
ほんの一瞬驚いたように目を見開き、それから酷く傷ついた表情をして、田辺が生から手を離す。
少しの間、眉を寄せて生を見つめ、それでも生から返ってくるのは無言ばかりと察すると、田辺は更に顔を歪めた。
小さく唇を噛み、それからふい、と顔を背けると、田辺は生への名残惜しさを振り切るようにくるりと生に背を向け、駅の方向へと走り去って行った。
去り際、田辺から一度、鼻を啜る音が聞こえた気がした。
見えなくなるまで田辺の背を見送って、生は一つ、ため息を吐いた。
田辺の傷ついた表情を思い返し、自分も結局は田辺と同じなのかも知れないという思いがふと脳裏を過ぎる。
貴史に想いが向いてしまった今、今までのような関係を続けることは田辺にとっても良いことではない。
――これで、いいんだよね。
言い訳のように自らに言い聞かせ、生も家路に就いた。
「今日お呼びしたのはですね、大八木店一店だけでされてましたウェアの貸与を、うちのジム全店舗に広げて本格的にやってもらいたい、と言うお話をさせて頂こうかと思いまして」
今となっては通い慣れた『ラクトスポーツ』を展開する娯楽総合商社、『ラクト』のスポーツジム事業部のフロア。
どのみち今日も訪問しようと、新しいパンフレットの準備をしていたところ、話があるので来て欲しいと、いつも生の応対をする、先方の担当者である加藤から電話があった。
いつものようにパーテーションのみで仕切られた小さなミーティングブースに通されたが、受け取る物だけ受け取ったら早々に生を追い帰す加藤が、今日はコーヒーの入った紙カップを二つ携えて、生の待つブースに入ってきた。
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