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誰もがきっと、誰かの。(84)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 靴には、貴史からもらった靴紐が、もらった状態のまま締められている。

 そしてポケットには、新しい靴紐。

 貴史に返すつもりで、貴史と出逢い、田辺と別れたあの日の翌日に買ったものだ。けれども貴史に連絡する手立てがなく、また、連絡をしないまま突然訪問して、七月の突然の来訪時に自分がいたように、万一貴史に来客があっては申し訳ないと、貴史の自宅を訪れることができないままずっと背広に忍ばせていた。

 否、貴史に申し訳ないというのは、誰に言うでもない、生の中だけの問題であるにもかかわらず、自らに言い訳するように用意した建て前だということは分かっている。貴史を突然訪問して、もし十日前の生のように、明らかに貴史と関係を持ったと分かるような男が貴史の部屋にいたら、自分はきっと傷ついてしまう。本当はそれが怖くて、貴史を訪れることができないだけだった。

 ただその靴紐は、この十日間、生の足元から、そしてポケットの中から優しく生を励まし、生の力となってくれていた。

 貴史が言ってくれた言葉が、実現する日が来ると信じて。

 今日、ラクトからもらった話は、その最初の第一歩だと思った。

 その話が纏まった時、貴史はどんな反応をするだろう。一緒に喜んでくれるだろうか。生を労い、認めてくれるだろうか。

 なんとか今日もらった話を纏めて、形にしたい。そうすればきっと、それを自信に変えて貴史に会いに行ける。

 オフィス街の空は狭い。

 大通りの上空、滑走路のように真っ直ぐ抜ける青を見上げながら、生はポケットの上から靴紐をそっと撫でた。

「これから、忙しくなりそうだな」

 頑張らないと、と唇を引き結ぶ。

 この十日間でいつの間にか願掛けのようになっている習慣。

 貴史がくれた靴紐が締められている、左足から一歩を踏み出して、生は自社へ戻る道を歩き始めた。


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コメント
秘密拍手コメレスでし(*´∀`)あ(・∀・)り(・∀・)が(・∀・)と(・∀・)う!ございマス(*´∀`)
>秘密拍手コメYさん(*´∀`)

真面目なんで貴史がいなくてもそれなりやってたとは思うすけど
やっぱ貴史の言葉は力になった、みたいなイメージで書いてみてます
少しでもお伝えできてればイイんですがドキムネ
逆に貴史は生が元カレとヨリ戻したと思って停滞気味なカンジでw
二人とも恋でし(*´∀`)
ああああほんとすね
二人くっついた暁には!!
一回目よりぜひ濃ゆーいセクースになるよう!!
がんがりたいと思います!!

年末のお忙しい中、お越し&コメあざした~~!!
2009/12/20(日) 13:11 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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