梅雨が明けたオフィス街の夜。
空気は蒸し暑く、建物を出た途端、オフィスで冷房に冷やされた身体はむっと湿った熱気に包まれる。夕立があったらしく地面が濡れていたが、それで少しは気温が下がったとは到底思えないような暑さだった。
この時間帯、ナシノの関東本社自社ビル正面の出入り口は閉鎖されている。生はいつものように従業員専用の裏口を抜けた。
一歩外に出ると、生を待ち構えていたように蒸し暑さが押し寄せる。生は小さく眉を寄せながら、それでも企画書が一段落着いた安堵もあってか、その暑さも苦笑で流すに留め、今夜は久しぶりに何か作って食べようかなどとぼんやり考えながら、駅へと向けて足を踏み出した。
空気は蒸し暑く、建物を出た途端、オフィスで冷房に冷やされた身体はむっと湿った熱気に包まれる。夕立があったらしく地面が濡れていたが、それで少しは気温が下がったとは到底思えないような暑さだった。
この時間帯、ナシノの関東本社自社ビル正面の出入り口は閉鎖されている。生はいつものように従業員専用の裏口を抜けた。
一歩外に出ると、生を待ち構えていたように蒸し暑さが押し寄せる。生は小さく眉を寄せながら、それでも企画書が一段落着いた安堵もあってか、その暑さも苦笑で流すに留め、今夜は久しぶりに何か作って食べようかなどとぼんやり考えながら、駅へと向けて足を踏み出した。
そのすぐ側、街路樹にもたれて立っていた人影が、ビルから出てきた生を見つけて身体を起こした。その人影が生に向かって近づき、行く手を阻むように立ちふさがった。
「こんばんは」
たおやかに微笑むその姿は涼しげで、暑さを全く感じさせない。生は驚いて立ち竦んだ。
それは三週間前貴史の部屋で出会った、七月という男だった。
生に、貴史には長く想っている相手がいると、教えた男。
そしてもしかしたら彼こそが貴史の想い人その人かも知れないと生に思わせた、仕草も立ち姿も美しい男。
「あ、……」
「お疲れ様」
七月は驚きのあまり絶句する生をものともしない様子で、にっこりと笑ってみせた。その余裕の笑みが、生の警戒心を煽る。生は僅かに身体を固くした。
「……、どうも。こんばんは」
どう接すれば良いか分からずに、強張った表情で小さく会釈を返す。
「スーツ、似合ってるね。でも、暑くない?」
身構える生の気持ちを知ってか知らずか、七月は生の全身を眺め、のんびりと世間話から会話を始めた。
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たおやかに微笑むその姿は涼しげで、暑さを全く感じさせない。生は驚いて立ち竦んだ。
それは三週間前貴史の部屋で出会った、七月という男だった。
生に、貴史には長く想っている相手がいると、教えた男。
そしてもしかしたら彼こそが貴史の想い人その人かも知れないと生に思わせた、仕草も立ち姿も美しい男。
「あ、……」
「お疲れ様」
七月は驚きのあまり絶句する生をものともしない様子で、にっこりと笑ってみせた。その余裕の笑みが、生の警戒心を煽る。生は僅かに身体を固くした。
「……、どうも。こんばんは」
どう接すれば良いか分からずに、強張った表情で小さく会釈を返す。
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