そして、俺たちは。（３）

　その意味を考える。今の歩の気持ちは。

　――嫉妬？

　誰かを好きになるならなぜ自分じゃないのか。歩は、そう思ってるんだろうか。兄弟である事への苛立ち？　同性である事の歯痒さ？

「相手、男なんだって」
「――え」

　思わず己の耳を疑う。今もはっきり覚えている。歩の兄の、薬指に光る指輪。歩と付き合っていると言った慎治を見た、嫌悪の込められた視線。その彼が、男を好きになった？

　――どのツラ下げてんな事――。それなら歩の気持ちにだって応える事が……。いや、それはまた別か。

　同性が恋愛対象に入ったからといって即兄弟も、と言う訳には行かないのは、弟のいる慎治にも分かる。特にこの兄弟は恐ろしい程のブラコン兄弟だった事を思いだす。歩の方にはまだ恋愛感情が残っているのかも知れない。けれども恋愛感情がなくとも、周囲に誤解を与える程にこの兄弟が想い合っているのは間違ない。それは慎治に入り込む事のできない領域。

　うまく思考が纏まらない。結婚する事で歩を絶望させ、離婚する事でまた歩を絶望させた……？

「歩」

　顔が見たい。歩の気持ちが知りたい。話せよ、歩。俺は、――お前に必要な事なら、なんだってしてやるから。

「慎治さん」

　慎治を抱き締める歩の腕の力がまた強くなった。

「……ん」
「……やっぱ慎治さん、兄貴に俺と別れるように言われたんだね」
「――ぁ」

　予想しなかった言葉に全ての思考が止まった。




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歩×慎治（高校生×リーマン）→（大学生×リーマン）