コイゴコロ、午後八時（11）（R18)

　潤んでいた陣内の目元から一筋、涙が零れた。

「ん……俺も、坂崎、……愛してる……」
「陣内さん……」

　陣内から掛けられたのも初めての言葉。鼓膜から全神経を通って身体の隅々にまで運ばれ、細胞の記憶として優しく刻まれる。甘く切なく、坂崎の胸が満たされた。

　唇を重ねながら、坂崎はそっと、陣内の頬を伝う涙を拭った。

　二人の呼吸が落ち着いたのを見計らって、坂崎は陣内と繋がっていた場所から、そっと身体を引いた。

「んっ、……」

　去ってゆく坂崎を引き止めるかのように、陣内の中がきゅ、と坂崎を締め付ける。

　すいません出しますね、と小さく言い置いて、陣内の中に吐いたものを指で、刺激を与え過ぎないようにそっと掻き出した。その間陣内は小さく震えて、過敏な己の身体を堪えていた。

　動きにくそうな陣内の着衣を整えてやり、坂崎自身も正して立ち上がる。二人向かい合い、じっと見つめ合った。

　二人に言葉は要らなかった。

　ただ、本能のままに抱き合った。



「――坂崎」
「はい」

　どのくらいの時間抱き合っていただろう、静かに、陣内が名を呼んだ。

「セーイチ、なんて？」
「……気になりますか？」
「どうしてセーイチからのメールで坂崎が不安になったのかがね」

　陣内は坂崎が見惚れて目が離せなくなるくらいに本当にふんわりと、優しく微笑んだ。





←10へ　/　→12へ
←１から読む
石田・陣内・坂崎についてはコチラ→『コイゴコロ』




にほんブログ村

↑ランキング参加中す。よければポチっと押してクダサイ
書く意欲に繋がってます。