Fly Me To The Moon（４）

　案の定和大はどこかほっとしたような、あるいは今聞いた言葉を嬉しいとでも感じているような表情を浮かべ、掴んでいたナツメの手首をようやく解放した。ナツメはその手首を痛かったと言わんばかりにわざとらしく撫でた。

「――ナツメさんを殴った相手とは？　付き合ってんの？」
「あー別れたよフラれたよ昨日なんだから傷抉んなって」

　――明るく言えた。

　自分で作った明確な原因があるから。

　相手の事は好きだった、これでも。

　けれどもいつか来る別れを思うと、不安に押し潰されそうで居ても立ってもいられなくなる。自らフラれる方向へと持って行くかのように浮気を繰り返し、結果愛想尽かされる。いつものパターン。それでも、理由が分からないまま終わりが来るより良い。

　人の気持ちがずっと変わらないなんて、有り得ないのだから。

　今まで何度も、身を持って知っている、紛れもない真実。

「――ねぇナツメさん」

　身を乗り出し、ナツメを覗き込むように、和大が話し掛けた。

「あんだよ」
「俺ならナツメさん殴ったりしねーよ」

　ぐらり。ほんの一瞬、心が揺れる。それを反射的になかった事にしようと言葉で押さえ付ける。

「たり前だろお前とは別に付き合ってるワケでも何でもねんだから」
「俺じゃダメ？」

「何がだよ」
「付き合う相手」

「――は？」
「俺と。付き合ってよ、ナツメさん」





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和大の初恋ｗ→『空に、白い雪』



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