夏休みに、慎治と暮らし始めた。彼の住むマンションに歩も一緒に住むことを慎治が許し、そして歩の両親にもそのことを話した。歩の幸せを誰よりも願う兄が、それを後押ししてくれた。
――今の俺の幸せはきっと、たくさんの人に支えられて成り立ってる。
――今の俺の幸せはきっと、たくさんの人に支えられて成り立ってる。
自分を殻に閉じ込めたまま成長してきた歩を、その理由を何も知らされないまま、心配そうに見守りながら優しく育ててくれた両親。慎治の元へ、何も言わずに行かせてくれた兄。少しでも多く稼げるようにと、時給の上がるフォークリフトの資格を取るよう歩に勧めてくれたアルバイト先の上司。そして、野本。大学生活、彼なくして歩はこれ程までにスムーズな単位の履修は成し得なかっただろう。
――みんなが俺の幸せを望んでくれるから、俺は今幸せでいられる。
最近になってやっと、感じるようになった。
――俺が笑えるようになったのだとしたら。
それは慎治と一緒に居ることができるようになったから。
慎治を想うとそれだけで、心に暖かな陽が差し込む。満たされて、穏やかに凪ぐ気持ちに、涙が溢れそうになる程に。愛する相手と共に生きることができる喜びを、感謝とともにその胸に思う。
「――ほらその顔」
「え?」
「時々してんだよ、そういう表情(かお)」
言われて歩は確かめるように頬に手を宛てた。その仕草に野本が目を細めて笑った。
「最初はスゲェ痛そうに生きてる野田のこと、うわほっとけねぇとか思って、それだけだったんだけど……」
――痛そうに生きてた。
事実、痛かった。ほんの少し綻びがあれば、そこから溢れ出し爆発してしまいそうな想いを必死に己の内に押し殺して時を過ごしていた。夢中になって生きている合間、こんなに必死になって何になるのかと、ふとその先を思って訪れる不安。こんな事をしたって、自分が慎治に犯した罪が償われるわけでもないのに、と。
その全てが報われ赦されてやっと、自分も笑って良いんだと、思えるようになった。
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