その優しさが、位織に僅かな期待を持たせ、けれどもふと現実を省みた時、それが位織を傷付ける。
――全部、分かってる。
位織が傷ついていても、それは全て位織自ら望んで選んできたことの結果だと。
尚大は何も、悪くない。
緩く笑って、位織はビールのプルを引いた。
――全部、分かってる。
位織が傷ついていても、それは全て位織自ら望んで選んできたことの結果だと。
尚大は何も、悪くない。
緩く笑って、位織はビールのプルを引いた。
「位織さん」
「……ん?」
ベッドの縁に座って位織と同じくプルを引いた尚大が、けれどもそれを飲まずに煙草を咥えて火を点けた。
「……他にも相手、いんだね」
「……、……ん」
尚大のその言葉には嫉妬どころか、どこか安堵さえしているかのような響きが含まれている気がする。
それは気のせいではないのかも知れない。
尚大がどういう形でそれを成就させたいと思っているのかは分からないが、彼にはいわゆる『本命』と呼べる想い人がいる。
位織にそれを打ち明けた上で成り立った二人の関係。
位織は尚大から一時的な快楽と、少しの癒しを求められているに過ぎない。本気になられてしまうより、他の男に抱かれることもある相手の方が、煩わしい思いをしなくて済むと思ったのだろう。
――それなら今日俺が友永に抱かれたことは、すごく意味のあることだったな……。
あとはただ、位織が想わぬ相手に抱かれる嫌悪を、抱かれている少しの間、我慢すれば良いだけのことだ。それでまた尚大と身体を重ねることができるのなら、容易いことだ。
尚大が吐き出した煙草の煙が。
口に含めたビールの苦味が。
甘美に位織の身体に染み渡り、位織を陶酔の世界へと導く。
ビールうまいね、と小さく呟いて、位織は笑った。
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尚大×位織
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「……ん?」
ベッドの縁に座って位織と同じくプルを引いた尚大が、けれどもそれを飲まずに煙草を咥えて火を点けた。
「……他にも相手、いんだね」
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それは気のせいではないのかも知れない。
尚大がどういう形でそれを成就させたいと思っているのかは分からないが、彼にはいわゆる『本命』と呼べる想い人がいる。
位織にそれを打ち明けた上で成り立った二人の関係。
位織は尚大から一時的な快楽と、少しの癒しを求められているに過ぎない。本気になられてしまうより、他の男に抱かれることもある相手の方が、煩わしい思いをしなくて済むと思ったのだろう。
――それなら今日俺が友永に抱かれたことは、すごく意味のあることだったな……。
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尚大が吐き出した煙草の煙が。
口に含めたビールの苦味が。
甘美に位織の身体に染み渡り、位織を陶酔の世界へと導く。
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