もうずっと以前から、蝶に囚われ続けている。
無邪気な美しい思い出から始まったそれは、時に妖しく、時に苦しくなる程に蠱惑的に、七斗の心を奪い、惑わせてきた。
――七月。
その背に羽が見えたのはいつ頃からだっただろう。
その羽は、年数を経るごとに美しさを増していった。それに比例して、七月に対するえもいわれぬ欲望のようなこの感情が、大きくなってゆくのを感じていた。いや、この感情が大きくなってゆくにつれ、その羽の美しさが増していったのかも知れない。
無邪気な美しい思い出から始まったそれは、時に妖しく、時に苦しくなる程に蠱惑的に、七斗の心を奪い、惑わせてきた。
――七月。
その背に羽が見えたのはいつ頃からだっただろう。
その羽は、年数を経るごとに美しさを増していった。それに比例して、七月に対するえもいわれぬ欲望のようなこの感情が、大きくなってゆくのを感じていた。いや、この感情が大きくなってゆくにつれ、その羽の美しさが増していったのかも知れない。
空へ羽ばたいてゆく二頭の蝶。逃がしてやろう、と言い出したのは七月だった。
二頭だけの狭い世界ではいられないと、七月は彼らだけを見て思ったのだろうか。
その時なぜか思った。
この二頭はどこか、俺たちのようだと。七月もそう思っていると。
思春期を迎え、日ごとに大きくなっていった欲望。あの頃の自分は、それを己の内だけに留めておくには子供過ぎた。
目の前で安易に落ちる方法をちらつかされて、そのはけ口を別に求めた日に、七月にそれを知られた。
同時に、七月を失った。
その身体を惜しげもなく男たちの眼前に晒し、そして与える七月は、時に七斗を苛み、時にその羽に触れてみたいと飢えさせ、そして自分にそれが叶わないのなら、その羽を引きちぎってしまいたいと思わせる程の艶を放つ。
そして今、その激情のままに七月の身体を引き裂き、その羽をもぎ取り、その背を汚(けが)してみて、見下ろした先に横たわる羽をもがれた七月は、けれども蝶の美しさはどこからも失われてはいなかった。
むしろ蝶であることのプライドを最後まで忘れずに、美しく立ち上がり、そして笑んだ。
その姿に、打ちのめされた。
俺に、七月を捕まえることはできないのか――。
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その時なぜか思った。
この二頭はどこか、俺たちのようだと。七月もそう思っていると。
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目の前で安易に落ちる方法をちらつかされて、そのはけ口を別に求めた日に、七月にそれを知られた。
同時に、七月を失った。
その身体を惜しげもなく男たちの眼前に晒し、そして与える七月は、時に七斗を苛み、時にその羽に触れてみたいと飢えさせ、そして自分にそれが叶わないのなら、その羽を引きちぎってしまいたいと思わせる程の艶を放つ。
そして今、その激情のままに七月の身体を引き裂き、その羽をもぎ取り、その背を汚(けが)してみて、見下ろした先に横たわる羽をもがれた七月は、けれども蝶の美しさはどこからも失われてはいなかった。
むしろ蝶であることのプライドを最後まで忘れずに、美しく立ち上がり、そして笑んだ。
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