「陣内さんの事、優しい先輩だな、って思ってました。俺の事いつも気に掛けてくれて、俺が助けを求める前にいつも助けてくれて」
――それは。……セーイチ、お前しか見てなかったから。
陣内を押さえ付けたまま、淡々と石田が話す。鼻先が触れ合いそうな至近距離。緊張で呼吸が荒くなる。
――それは。……セーイチ、お前しか見てなかったから。
陣内を押さえ付けたまま、淡々と石田が話す。鼻先が触れ合いそうな至近距離。緊張で呼吸が荒くなる。
「でもある日を境に陣内さんに対する俺の気持ちが変わり出したんです。変わった、というより今まで正体が分からなかった気持ちにやっと気付いた、って感じですか」
「……、セーイチ、手を」
自由を奪われたままの手首が痛い。指先が痺れて感覚がない。揺れる陣内の瞳を見詰めて、石田はふと笑った。
「好きなんです、陣内さん」
手首に掛けられた力が強まって、石田の唇が近付く。身体中に走る、危機感。ふと脳裏に浮かんだのは、坂崎の姿。
「や、めろってセーイチっ」
手を振りほどこうと目一杯腕に力を込める。けれども力では到底敵わない。押さえ付けられたまま、顔を背けてぎゅ、と目を瞑った。
「坂崎、ですか?」
「……え?」
ふと、手首に掛かっていた力が抜け、腕が解放された。下ろした腕に血が通い始める。図らずも怯えて固まっていた身体。気付かれないようにそっと息を吐いた。
「坂崎と付き合ってるんですか?」
「な……んでそうなるんだよ。坂崎も言ってただろ? 飲み友なんだって」
――言えない。俺はともかく、坂崎がそうだとは。セーイチは坂崎と同期だ。巻き込むわけにはいかない。
石田が何を感じたのか、目線を落として静かに笑った。再び上げた視線で、真っ直ぐ見据えられる。
「坂崎と同じ事言うんすね。この前陣内さんの所から一緒に帰った時、坂崎にも訊いたんすけどあいつも絶対認めなかった。何をそんなに……守り合ってる、んですか?」
坂崎も同じ事を。守る? 俺を――?
――坂崎……。
切なさで胸が締め付けられる。同時に身体が温かい気持ちで満たされる。
陣内は見据える石田の視線に真っ直ぐ応えた。
「セーイチには、きっと分からないよ」
――結婚もしてる、ノンケのお前には。
「そう、ですか」
石田がふう、と息を吐いて、唇を結んだ。
「……俺、急ぎ過ぎたんですかね。時間がなくて、焦ってしまいました」
「――え?」
「来春からシンガポールなんです、俺。先週部長から言われて。来週には正式に辞令も出ます」
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「……、セーイチ、手を」
自由を奪われたままの手首が痛い。指先が痺れて感覚がない。揺れる陣内の瞳を見詰めて、石田はふと笑った。
「好きなんです、陣内さん」
手首に掛けられた力が強まって、石田の唇が近付く。身体中に走る、危機感。ふと脳裏に浮かんだのは、坂崎の姿。
「や、めろってセーイチっ」
手を振りほどこうと目一杯腕に力を込める。けれども力では到底敵わない。押さえ付けられたまま、顔を背けてぎゅ、と目を瞑った。
「坂崎、ですか?」
「……え?」
ふと、手首に掛かっていた力が抜け、腕が解放された。下ろした腕に血が通い始める。図らずも怯えて固まっていた身体。気付かれないようにそっと息を吐いた。
「坂崎と付き合ってるんですか?」
「な……んでそうなるんだよ。坂崎も言ってただろ? 飲み友なんだって」
――言えない。俺はともかく、坂崎がそうだとは。セーイチは坂崎と同期だ。巻き込むわけにはいかない。
石田が何を感じたのか、目線を落として静かに笑った。再び上げた視線で、真っ直ぐ見据えられる。
「坂崎と同じ事言うんすね。この前陣内さんの所から一緒に帰った時、坂崎にも訊いたんすけどあいつも絶対認めなかった。何をそんなに……守り合ってる、んですか?」
坂崎も同じ事を。守る? 俺を――?
――坂崎……。
切なさで胸が締め付けられる。同時に身体が温かい気持ちで満たされる。
陣内は見据える石田の視線に真っ直ぐ応えた。
「セーイチには、きっと分からないよ」
――結婚もしてる、ノンケのお前には。
「そう、ですか」
石田がふう、と息を吐いて、唇を結んだ。
「……俺、急ぎ過ぎたんですかね。時間がなくて、焦ってしまいました」
「――え?」
「来春からシンガポールなんです、俺。先週部長から言われて。来週には正式に辞令も出ます」
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コメント
あったかいっすよ・・・
胸のここんとこ(どこ?)ジーンってあったかいっす。
鼻先が触れ合うくらいの至近距離に
石田さんの顔があるというのに
脳裏に浮かんだのは坂崎さん・・・
いやすでに本物ですからっ。その心!
もー、お互いにお互いのこと大切に思い過ぎ!
せーいっつぁん、シンガポーに行っちゃうんですか!?
話の展開がドラマ仕立てだなぁー♪
ていうかいつもかんなりイイ意味で予想を裏切る展開♪
んもー、ワックワクですからーー♪
胸のここんとこ(どこ?)ジーンってあったかいっす。
鼻先が触れ合うくらいの至近距離に
石田さんの顔があるというのに
脳裏に浮かんだのは坂崎さん・・・
いやすでに本物ですからっ。その心!
もー、お互いにお互いのこと大切に思い過ぎ!
せーいっつぁん、シンガポーに行っちゃうんですか!?
話の展開がドラマ仕立てだなぁー♪
ていうかいつもかんなりイイ意味で予想を裏切る展開♪
んもー、ワックワクですからーー♪
2008/03/05(水) 00:04 | URL | ぶり #-[ 編集]
陣内さん、やっぱり可愛いです♪
幾つの設定でも可愛いものは可愛いの~
セーイチ、既婚者の都合なんて知らないのよっ!
離婚してからおいで!!
二兎を追うものは一兎をも得ず
って、もうすっかり坂崎さんの味方ですw
幾つの設定でも可愛いものは可愛いの~
セーイチ、既婚者の都合なんて知らないのよっ!
離婚してからおいで!!
二兎を追うものは一兎をも得ず
って、もうすっかり坂崎さんの味方ですw
2008/03/05(水) 13:58 | URL | 蛍 #-[ 編集]
>ぶりさん!
うわーいぶりさんあったまっていただけましたか!
同じ嗜好同士一蓮托生
守り守られでもうできあがってます!
身体に教え込んだ(?)甲斐あって
陣内すっかり坂崎のものになってるのに
私もはやく完結させてしまいたいですwwwww
遅筆ですんませ…wwwwwworz
いい意味で!マジですかもう(´Д⊂ヽ
色々ヘタレなんであんまり思い切った展開できなくて
もっとこう…何かないのかしらと
もんどり打ち頭抱えながら書いてるので
ホント嬉しいです。
ご期待に添えるかどうかハナハダ不安ですが
よろしければ最後までお付き合いよろしくです!
>蛍さん!
30歳でも可愛いアリですか!!
ありがとうございます!!
既婚者はマズいすよねぇ
陣内も半分忘れかかってましたので
思い出させましたwwwwww
一応そのあたりも最後までには拾って終わらせるつもりしてますw
坂崎応援あ(・∀・)り(・∀・)が(・∀・)と(・∀・)う!ございマス!!
最後は坂崎自身にがんがらせた方がイイでしょうか
ちょっと今纏めに迷ってますwwwwww
色々お忙しい中いつもありがとうございます!!!
うわーいぶりさんあったまっていただけましたか!
同じ嗜好同士一蓮托生
守り守られでもうできあがってます!
身体に教え込んだ(?)甲斐あって
陣内すっかり坂崎のものになってるのに
私もはやく完結させてしまいたいですwwwww
遅筆ですんませ…wwwwwworz
いい意味で!マジですかもう(´Д⊂ヽ
色々ヘタレなんであんまり思い切った展開できなくて
もっとこう…何かないのかしらと
もんどり打ち頭抱えながら書いてるので
ホント嬉しいです。
ご期待に添えるかどうかハナハダ不安ですが
よろしければ最後までお付き合いよろしくです!
>蛍さん!
30歳でも可愛いアリですか!!
ありがとうございます!!
既婚者はマズいすよねぇ
陣内も半分忘れかかってましたので
思い出させましたwwwwww
一応そのあたりも最後までには拾って終わらせるつもりしてますw
坂崎応援あ(・∀・)り(・∀・)が(・∀・)と(・∀・)う!ございマス!!
最後は坂崎自身にがんがらせた方がイイでしょうか
ちょっと今纏めに迷ってますwwwwww
色々お忙しい中いつもありがとうございます!!!
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