そばにいるから。（６）

　歩にコーヒーの入ったマグをはい、と手渡され、悠はありがとう、とそれを受け取った。

　悠がコーヒーを好きになったのは、ここで飲ませてもらうコーヒーのお陰だと言って良い。学に連れられこの家に遊びに来た小学生の悠に、歩は麦茶でも出すようにコーヒーを出した。砂糖もミルクも入っていないそれを、出された手前躊躇しながらも飲んだ悠は、その優しい味に驚いた。「おいしい」と小さく言った悠に、歩は黙って笑みを返した。悠はその笑みに僅かに見入り、羨望のような、そして何故か嫉妬とも諦めともつかない気持ちを抱いた。それでもその時から、この家で飲むコーヒーが悠の楽しみにもなった。

「そんなワケねぇよ。……サトルはいつもあーちゃんあーちゃんって。そればっかなのに」
「サトルのは、違うよ」

　悠の向かいに座った歩が、静かに言った。

「違うって、何が？」
「うまく説明できないけど。サトルのそれは、違うから」

「ハルカー、デラックス北海三色丼。スゲェぞ見ろよ」

　歩にその言葉の意味を訊く前に、学が丼を携えて悠の元に戻ってきた。悠の横、ソファの肘置きに腰を下ろしてその中身を見せる。

　器の中には大振りのホタテ貝柱にウニ、シャケの刺身。その上にはイクラ。輝く色艶のそれらがシャリが見えない程ふんだんに盛られていた。

　学がその中からホタテを摘み、口の中に放り込む。

「うわスゲ、口ん中で溶ける」

　悦に入った表情でひとしきり堪能した後、学はホタテをもう一切れ、箸で摘んだ。

「ほらハルカ、お前も食ってみろよ」

　ごく当たり前のようにそれが悠の口元へ運ばれる。

「あ、……」

　思わず口を開いたその隙を狙うように放り込まれた食感を少し味わい、学の言った通り口の中で溶けるようになくなっていったそれに毒気を抜かれて悠は数度瞬きをした。

「……ほんとだ。スゲェ」
「だろ？　もっと食う？」
「や、いい。俺腹減ってねぇし」
「そ？　じゃ俺全部食うよ？」
「ん、いいよ」

　悠の答えと同時に学は丼を掻き込んだ。

　学がこんなだから。

　――俺はサトルを諦められねんだろ？

　北海三昧に浸る学を横目に、口内に僅かに残る味をコーヒーで流す。ミスマッチに思えるその組み合わせでさえ優しい香を残すそのコーヒーに、悠は苦笑した。




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野田学について(*´∀｀)

叔父：野田歩（あーちゃん）
父　 ：野田進
『野田学、10歳。好きな人がいます。 』

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小学生の扱いについて何の知識もない歩は
特に何も考えずにフツーにコーヒーを出した次第すｗ
コーヒー豆は慎治セレクト。慎治はホントはもっとガツンとクる豆が好きだけど
歩の好み優先で豆は「ハイチ」　酸味苦味なく優しい味(*´∀｀)
コーヒーには全然詳しいわけじゃないすけど、私的思い入れのある豆す(*´∀｀)

ああああ私、グルメレポーターにはきっとなれなすwwwwwwworz