そばにいるから。（９）

　学が進と呼ぶ男は、学の二人いる父親の一人だ。顔立ちから察するに学と血が繋がっているのはこの男なんだろうが、年齢を感じさせないその童顔の所為か、彼が学の父親だとはにわかに信じがたい。

「慎治が経済だから俺もそれ狙いで行くかなぁ」
「サトル、慎治さんたちと同じ大学行くつもりしてんの？」
「んー一応ね。第一志望にはそう書くよ」
「へぇ……」
「ハルカ、一緒受けるだろ？」
「――え？　俺？」

　慎治と歩の出身大学であるＫ大は日本屈指の難関大学だ。事も無げにその大学を一緒に受験する事を誘う学に驚いて、悠は思わず聞き返した。

「うん。どっか行きてぇとこあんの？　よく分かんねぇけど、店やるにしても経営とか、やっときゃ何かと役立つんじゃねーの？」
「俺は……」

　――俺は。

　大学。学の側にいても、いつまでたっても叶う事のない想い。離れるのに、良い機会なのかも知れない。

　悠は読んでいた雑誌を閉じた。

「俺……京都行こうかと、思ってて」
「え？」
「店長が自分の店出すのに、俺も一緒に来ないかって。言われてんだ」
「――は？」

　学の眉間に、皺が刻まれる。学は突っ伏していた身体を起こして悠を見た。

「なんでここで店長とか出てくんの？」

　急に迫られた選択。学に、倉本との関係を言ってしまえば。

　それはきっと、学への想いを完全に断ち切って、倉本のものになると言う事を意味する。

　――サトル。

　それなら、諦めがつくように、徹底的に。

　悠は身体を起こして、ベッドに座った。







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野田学について(*´∀｀)

叔父：野田歩（あーちゃん）
父　 ：野田進
『野田学、10歳。好きな人がいます。 』

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