そばにいるから。（24）

「――バカ歩」

　歩の仕事部屋から、歩以上に疲弊した様子の慎治が歩を睨むように目を眇めてリビングに入ってきた。

「慎治さん……」

　歩は身体を起こして慎治を見た。近付く慎治を両腕を広げて迎え、隣に座った伴侶をもたれ掛かるように抱き締める。慎治から返される抱擁に、歩は幸福を噛み締めるように目を細めた。

「もう二度とすんなよ」
「ん……ごめんね」

　慎治以外の人間に行為を匂わせるような、あんな行動を目の前で繰り広げたのに。慎治はそれを黙って見逃してくれた。

　――慎治さん、愛してる。

　歩はその想いを抱き締める腕の力に込めた。

「そんなにサトルが可愛いのかよ」
「違うよ。俺が可愛いのは、ハルカだ」

　想う相手が側にいながら、その想いを打ち明ける事もせずに、ただ黙って学の側に居続けた。その姿にかつての自分が重なった。

　悠をこれ以上泣かせたくなかった。

「……そか」
「それにハルカとなら、きっとサトルは幸せになれるよ。……あとは二人次第、かな」

　どこか遠くを見るように呟く歩の頬を包んで、慎治が歩の焦点を自分へと向けさせた。

「お前サトルん事甘やかしすぎだろ」
「慎治さん程じゃねーよ」
「俺がいつサトル甘やかしたんだよ」
「いつでも」
「あ？　んなワケねぇ」

　無自覚なはずはないのに、とぼけた口調で笑う慎治に歩も笑って、そしてキスを交わした。

「慎治さん」
「あんだよ」
「慎治さんは、俺に抱かれてくれる？」
「……今日はそのあと俺にも抱かせろ」
「ん……いいよ」

　歩は笑顔とキスでそれに応えた。






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野田学について(*´∀｀)

叔父：野田歩（あーちゃん）
父　 ：野田進
『野田学、10歳。好きな人がいます。 』

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