そばにいるから。（23）

　一か所。傷ついた事で閉ざしてしまった心を緩めてやれば、きっと学は素直になる。

「それはサトルがハルカから直接聞きなよ」

　ぽん、と学の膝に手を乗せた。

　拗ねて尖った学の唇。俯いて頬に掛かる髪。だらりと力なく下ろされた腕。その全てが、悠を想っている。

　学が動く事で、学自身が幸せになれるんだと、膝に乗せた手に想いを込めた。

「考えなくたって、サトルだってほんとは分かってるだろ？」
「……何がだよ」
「サトルが抱き合いたいのは、ほんとは俺じゃないよね」
「…………」
「早くしねぇと、ほんとに間に合わなくなるよ」
「…………」

　学は目を閉じた。泣き出しそうなのを堪えるように。眉を寄せてしばらくじっと、肩で呼吸をして。どのくらいそうしていただろうか。やがて、学はゆっくり目を開けた。

「あーちゃん」
「……なに？」
「あーちゃんいっぱい喋ったね」

　学は、お節介な叔父を見下ろしてにや、と笑った。

「……一生分くらい喋ったかな」

　学に戻った表情。歩は目を細めて学を見詰めた。

「あーちゃん、大好きだよ」
「……ん」

　不意に、学に抱き締められた。肩幅はもう歩と変わらない。かつて、歩の腕の中に収まっていた学が。押し寄せる感慨に浸るようにゆっくり瞬きし、歩は学の背をぽんぽん、と優しく叩いた。






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野田学について(*´∀｀)

叔父：野田歩（あーちゃん）
父　 ：野田進
『野田学、10歳。好きな人がいます。 』

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