すべては愛のせいだろ？（17）

「ん。今最後の配達行ってきたとこ。そっちは？　二軒目？」

　聡士の隣に立つ男をチラ、と見やって意味深に聞いてやる。

「そんなとこ」

　聡士もしれっとした様子で一度傍らの男に視線を向けてから、に、と屈託なく笑って淳汰を見た。

「仕事終わったらお前も来る？」
「――は？」

　その意味を問い返そうと眉を寄せて聡士を睨むように見やると、聡士は隣の男にいーだろコイツタチだし、と淳汰の答えも聞かずに許可を取った。

「俺は……構わないけど？」

　聞かれて男は酒の所為か隠し切れなくなった好色そうな目元を更にいやらしく細めて、軽く頷いた。

「や、俺は……遠慮しとく」
「なんでだよ。明日休みだろ？」
「気分じゃねんだよ。てかお前なんで俺の休み把握してんだよ」
「先週土曜が休みだったろ？　翌週は日曜。その次は平日に二日。お前の休日パターン」

　知ってて当然、と言いたげな表情で聡士は肩を竦めた。

「とにかく今日はいいよ。せいぜい楽しんでこいよ」
「そか？　じゃな。また連絡する」

　行こう、と聡士が軽く男の背に手を宛てて促し、二人が方向を変える。淳汰は二人を背に車に乗り込み、二人から世界を切り離すように荒々しくドアを閉めた。

「――なんなんだよアイツ」

　車を走らせてもチラつく、聡士の横にいた男。

　――ヤる前からその気満々っつう顔しやがって。気持ち悪ぃっつの。あの淫乱ぶりじゃ聡士にちょっと触られただけですぐイっちまいそうだよな。ノリノリで聡士の上に乗っかるかもだ。聡士のヤツ、俺に挿れてクセんなりそうとか言っときながらあんなヤツでもイイんじゃねーかよ。アイツにも言うんだろ、クセんなりそうとか。あとから俺が行ってどうすんだってぇの。そんなとこなんで俺が横で見てねぇとなんねんだよ。

　頭に血が上る。気付いたら車が相当な速度になっていた。ヤベ、とアクセルから足を外して道路脇に車を寄せた。





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↓二人がちょろっと出てくる話はコチラ
中野聡士→『にしがひがしに』
山井淳汰→『24/7(twentyfour-seven)』


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