すべては愛のせいだろ？（18）

「あーもーそうだよ耐えられねんだよアイツが他の誰かに触るとか挿れるとか……っ」

　だからずっと自分に言い聞かせてきた。聡士は恋愛に不向きだと。ヤツとは『ない』と。

　それなのに。とうとう気付いてしまった。

　束縛したい。奔放な聡士の自由を奪って自分だけのものにしたい。己の身体で聡士を繋ぎ止める事ができるなら、それも辞さないと思える程に。他の誰かに挿れるくらいなら。

「けどどうしようもねぇだろ……っ」

　今日改めて思い知った。聡士の特別には、なれない。

　ハンドルに縋るようにもたれ掛かった。苦しさに、歯を食いしばる。込み上げる想いが押し寄せて、不意に目が熱くなった。舌打ちをして顔を上げると、街の灯りが僅かに歪んで見えた。

「ネオンが目に染みる？　みてぇな？」

　バカか俺、と自嘲するようにふっと笑って、一度だけ鼻を啜った。それから淳汰は事務所へ向けて再び車を走らせた。








「中野お前それ、報告書」
「あー？」

　聡士がシュレッダーにかけようとしていた紙を摘んで、同期の木戸が聡士を覗き込んだ。

「なんかお前、ヘンじゃね？」
「木戸お前、関西イントネーションでその言い方やめろって。なまってんだよ」
「うっさいわ。親切に教えたったヤツに言う事がそれか」

　木戸はさして気を悪くした様子もなく笑いながら、けれども報復とばかりに摘んだ報告書をシュレッダーにかけようとしたから聡士はやめろ、と木戸から報告書を奪い取った。

「なんかほんまヘンやで中野。相談要るんやったらいつでも言えよ」
「あー……木戸、お前今晩空いてる？」
「空いてる空いてる。俺はコイビトとは週末にしか会えへんし。平日はなんもなしやで」

　待ってたと言わんばかりににや、と笑って頷き、コピー機はあっちやで、と柱の向こうを指差して聡士に教えてから、木戸は自席に戻って行った。





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↓二人がちょろっと出てくる話はコチラ
中野聡士→『にしがひがしに』
山井淳汰→『24/7(twentyfour-seven)』


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