すべては愛のせいだろ？（23）

　すとんと、どこかに収まってしまったように聡士の動きが止まった。それでもにわかには信じられないのか、呆然とする聡士に木戸はに、と笑みを向け、言い切った満足感から一気にジョッキを煽った。空いたジョッキを机に置くと同時に少し離れた場所にいる店員に生大二つ、と威勢よく追加注文した。

「そうか……」

　しばらく動かなかった聡士がやっと理解できたのか、打ちのめされたようにああああ、と頭を抱えた。

「こんなん初めて？」
「そう、かも……」
「初恋オメ」

　木戸は動揺のあまりうわー、と小さく叫ぶ聡士の肩をぽふりと叩いた。







「――実体験に基づくアドバイスどーも」

　ようやく落ち着きを取り戻した聡士が疲れた表情で肩肘を机に突いて頭を支え、到底感謝を述べる態度には見えない格好で木戸を見た。

「なんの」

　それでも木戸は、木戸の言葉を素直に聞き入れた聡士がまた彼らしいと嬉しくもあり、言って良かったと言うように笑みとともに頷いた。

「……木戸君は太一クンがいながら他のヤツとヤったワケやね」

　あっと言う間にいつもの不敵な表情に戻ってしまった聡士がニヤリと笑う。

「ちゃうわアホっ。太一がダイジすぎて手ぇ出せんかった時の話や。太一が俺のんになってからは太一としかしてへんわっ」
「へーほー」
「お前な……感謝されこそすれ、そんな扱い受ける覚えはないでほんま」
「わぁってるよ次太一クンに会った時にはお前がどんだけ太一クンの事を愛しちゃってるか、俺からも言ってやるって」

　任せとけ、と満面の笑みで、聡士は追加で来たばかりのジョッキを握った。

「もう頼むから俺らの事はそっとしといてくれ……」

　木戸は疲れた表情で、この男はまったく、とゲンナリしたように木戸を緩く睨み付けた。






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中野聡士→『にしがひがしに』
山井淳汰→『24/7(twentyfour-seven)』


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