コイゴコロ、午後八時（５）（R18)

「坂崎……、坂崎も……？」

　陣内に握られたそこは、陣内同様密室の濃密な空気にその欲望を擡げていた。陣内に握られた事で、その手の中でどくんと脈打ち、坂崎の雄が陣内の手のひらにその存在を主張する。

「坂崎……」

　不意に、陣内が坂崎に預けるその身にそっと体重をかけた。陣内に押されるままに坂崎は数歩後退し、廃棄を待つばかりの資料を綴ったファイルがぎっしり詰まった棚に背を預ける形になる。

　坂崎を優しく押さえ付け、握った坂崎の熱をそっと揉みながらゆっくりと、陣内が膝を折った。坂崎の身体に添わせたもう片方の手は、身体の移動に合わせて坂崎の胸元を撫で下りてゆく。

「坂崎、……欲しい」

　跪(ひざまず)いた陣内が、坂崎のベルトを緩めにかかる。スラックスの前が寛げられると、中から現われたのは下着越しにもはっきりとその形を浮き上がらせる坂崎の熱塊。

　陣内は首に角度を持たせ、その熱を布の上からそっと咥えた。

　途端に、坂崎の身体の中は熱風が駆け抜けたようにかっと、熱くなる。

「ああ……、陣内さん……」

　堪らない。

　――陣内さんは必要な時に俺の気持ちをもらったって言ってたけど。

　坂崎は自分こそが、必要な時に陣内から心を与えられていたんだと思う。

　石田の事を好きだと知っていながら、それでも陣内が欲しいと食い下がった坂崎に。

　陣内を諦め切れずに身体だけでいいからと、毎週のように陣内の部屋を訪問し続けた坂崎に。

　陣内は優しくその場所を坂崎に貸してくれた。

　そして今も。

　たった一通のメールで不安に陥りそうになった坂崎をこうやって、言葉と態度で優しく包み込む。

　その愛情の深さに、坂崎は今夜も打ちのめされる。そしてまた、陣内に嵌っていく。より深く。




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石田・陣内・坂崎についてはコチラ→『コイゴコロ』




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