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Fly Me To The Moon(7)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 不幸は、母と男の趣味が似ていた事だろう。

「愛してるよナツメ……ナツメだけだ」

 そう囁きながら彼は、恋をしたナツメを抱いた。ナツメは中二だった。

 相手は、母が連れてきた新しい父親。



 恋に、舞い上がった。想う相手に抱かれる悦び。そんな幸せがずっと続くと思っていた。そのためになら何もかも捨てる覚悟もあった。

 けれどもその男は、ナツメを抱いたその腕で、ナツメの母を抱いた。ナツメが咎めようとすると、男はまたナツメを抱く事でそれをうやむやにした。

 そして彼は突然、いなくなった。ナツメの前からも、母の前からも。

 それでもナツメも母も、また恋をした。新しい、違う相手に。

 ――永遠なんてない。それこそが永遠に言える真実。

 その出来事が原因だとは思わない。きっとこれをきっかけに、自分の在り方に気付いただけだ。

 相手の気持ちも、自分の今ある気持ちでさえも、信じる事ができない。

 誘いが軽い程、楽だった。

 相手の気持ちが大きい程、余所に逃れて、相手を傷付けた。




「――で、今の俺の出来上がり、か」
「何?」 
「なんでも。ちょっと昔の事思い出してた」

 数学準備室。数学教師の河辺がコーヒーの入ったマグをナツメに手渡しながら聞いた。

「思い出す事多過ぎて大変だろ」
「そうでもねーよ」

 笑いながら問う河辺に、ナツメはしれっと答えて肩を竦めた。






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