恋の理由・ある夜の会話（４）

「慎治さんを安心させてあげないと、心配なんだ」

　ますます混乱する。野本は小さく眉を寄せた。

「彼氏が心配するから、じゃなくて彼氏が心配だから、ってことかよ？」
「ん、そう。一緒に住んでからは、雨の日はなるべく一緒にいるようにしてる。ほんとは……バイトも休みてぇんだよね」

　野田の、目元が和らいだ。誰を想っているのか、会話からすぐに想像はつく。それなのに野田のその表情に、野本の心はきゅ、と締め付けられる。それを振り切るように大きく息を吸った。

「じゃあ雨がダメなのは野田じゃなくて彼氏の方なんじゃねぇの？」
「……、……あ」
「……なに」
「今となってはそう、なのかも」

　野田の会話のテンポに翻弄されている気がする。妙な間とても言うのだろうか、会話のキャッチボールはできているはずなのに、不意にフェイントを掛けられる。

「聞いてもいい？」
「？」
「雨がダメっつう理由」

　――知りてぇんだよ。野田のこと。

　野本も負けじとボールを投げ返した。

「……長くなるよ」
「全然いいし。まだ夜始まったばっかじゃねぇかよ」

　テレビでは野球中継も四回表。試合終了までだってまだまだある。

　本当にいいのか、と問うような視線を向ける野田に、野本は大きく頷いてみせた。





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野田歩について：歩×慎治　
野本が歩に告った話　　　　→　『瞳を閉じればあなたが、まぶたのうらにいることで』
歩が雨の中帰ってった話　→　『雨の日には抱きしめて、その腕で確かめて。』


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