けれども心の奥底では分かっている。
本当はそう簡単には割り切れない。
諦め切れないからこそ七斗と一緒にいるのが苦しい。
諦め切れないからこそ誰も愛することができない。
諦め切れないからこそ。
――七斗。
「一番理解って欲しい相手なのに……」
こんな自分を理解してくれたら、と夢想する。
本当はそう簡単には割り切れない。
諦め切れないからこそ七斗と一緒にいるのが苦しい。
諦め切れないからこそ誰も愛することができない。
諦め切れないからこそ。
――七斗。
「一番理解って欲しい相手なのに……」
こんな自分を理解してくれたら、と夢想する。
ゆっくりと煙を吸い込んだ。
普段煙草を吸わない身体には、たったそれだけでくらくらと、七月から血の気を奪ってゆく。それでもどこかほっと、落ち着いた気分になれた。
僅かに乱れた髪を手櫛で梳いて、吸い込んだ時と同じようにゆっくりと煙を吐いた。
普段煙草を吸わない身体には、たったそれだけでくらくらと、七月から血の気を奪ってゆく。それでもどこかほっと、落ち着いた気分になれた。
僅かに乱れた髪を手櫛で梳いて、吸い込んだ時と同じようにゆっくりと煙を吐いた。
七月の腕を取り、手首に痕が残っていないことを確認した望木は、ベッドから下りて服を着込みだした。
望木で四人目の相手と聞いて七月の身体を慮ったのだろうか、あるいは四人目と聞かされて呆れたあまり挿入する気が失せてしまったのかも知れないが、いずれにしても望んだ質量を与えず、七月をとことん焦らす意地悪さが今の七月には必要だったと、望木の取った選択に七月は内心でそっと感謝した。
望木で四人目の相手と聞いて七月の身体を慮ったのだろうか、あるいは四人目と聞かされて呆れたあまり挿入する気が失せてしまったのかも知れないが、いずれにしても望んだ質量を与えず、七月をとことん焦らす意地悪さが今の七月には必要だったと、望木の取った選択に七月は内心でそっと感謝した。
移動の最中、二人黙ってゆったりと特急電車に揺られながら、慎治は読んでいた本もそこそこに眠りに落ちた。
歩に頭を預ける慎治に肩を貸しながら、これ以上の幸せはないと思う反面、いつも外に出れば完璧なまでに隙を見せることのない慎治が、歩が傍らにいたとはいえ、電車の中で眠ってしまうほどのその仕事の多忙ぶりと厳しさを、歩は少し憂えた。
ゆったりと唇を食み合って、舌先で互いを確かめる。互いの温もりを伝え合い、心まで温まると、ゆっくりと唇を離した。
「慎治さん、愛してる」
「ん……俺も愛してるよ歩」
見つめ合い、微笑み合った。
出逢ってから二十年。
共に年齢を重ね、二十年変わらず互いを想い合ってきた。
共に過ごした年月は二人の想いをより深く、より強いものへと導いてきた。
そしてこの瞬間もまた、深まってゆく。
それが歓びだと感じることができる幸せ。
何もかもが心地好く、ゆったりと広がりたゆたう。
「――慎治さん、今何時?」
「んー……二時半」
慎治が左手首のクロノグラフをちらりと見て、それを歩にも見せた。
夕食は六時に頼んでおいた。それまで三時間半。
「観光、明日で良いよね」
「ん、全然」
「風呂、入ろ?」
「――だな」
慎治は両の口端を笑みに上げ、少年のように笑った。
二人で着ていたものを脱ぎ、部屋に置いてあった浴衣を羽織った。
腕を通す場所さえ分からずに袂(たもと)を覗き込む歩に慎治は嘘だろ、と笑って、歩を手伝った。その手際に歩が見惚れるのも数秒、慎治は自らの浴衣の帯も、すっと背筋が伸びそうな小気味好い衣擦れの音を立て、流れるような美しさで締めてみせた。
歩がすごいな、と無言で感動していると、慎治は「すぐ脱ぐから今は適当な」と軽く肩を竦めた。
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歩×慎治
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「――慎治さん、今何時?」
「んー……二時半」
慎治が左手首のクロノグラフをちらりと見て、それを歩にも見せた。
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