コイゴコロヒトツ+ヒトツ（18）

「陣内さん……」

　恋しい人の名前を囁き、額に手を置いてみる。熱い。どうすれば良いんだろうか。来てはみたものの、看病の仕方が分からない。額から手を離そうとすると、陣内が薄く目を開けた。

「坂崎……来てくれたんだ……」

　弱々しいながらも、陣内はこの上なく柔らかい笑みを浮かべた。石田も陣内のこんな表情を見たんだろうか。こんな表情(かお)をされたら、キスをしたくなるのも無理はない、と思った。

「起こしてすいません。陣内さん、どうすか？　大丈夫すか？」
「ん……寒い、から坂崎……隣で……」

　寝て欲しい、と陣内は坂崎の手首をそっと握った。

「俺で、いいの？　陣内さん……」

　石田だって、陣内が呼べばきっとすぐ来るだろう。陣内は石田の気持ちをまだ知らない。けれども。

　――俺からそれを教える事は、どうしてもできない。

「な、にが……？　坂崎は、俺の彼氏だろ……？」

　陣内が坂崎の手首を口元に引き寄せ、人差し指に甘く歯を立てた。

「陣内さん……俺イきそ……」

　半分本気だったが冗談口調で情けなく表情を崩すと、陣内は目を細めて笑った。




　結局上下下着になって、坂崎は陣内のベッドの中に入った。陣内の熱い身体を背後から抱き締める。

「陣内さん、こんな熱いのに寒ぃの？」
「ん……坂崎、あったかくて……気持ち良い」
「陣内さんの熱、俺がもらうから」

　早く良くなって下さい、とうなじに口付けた。

「坂崎、……」

　陣内が何かを言いかけて、口を噤む。

「はい……」
「セーイチが来るの、知らなくて……」

　ごめん、と小声で謝って俯いた。

「俺こそ……販ニの動き、ちゃんと見てれば気付いたかも知れないのに……俺は……」

　二人のキスの、邪魔をした。
　石田が、陣内への気持ちに気付いてしまった。

　――陣内さんが、俺を必要としなくなるのも、時間の問題かも知れない。

　何もかもが、自分にとって悪い方向へ向かっているような気がした。

　――今日が最後かも知れない。今この腕の中に居る陣内さんを、忘れたくない。

　坂崎は陣内を抱き締める腕に、力を込めた。



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